今やアメリカ最大のVCは、かつて自らが起業した経験を持つアンドリーセン・ホロウィッツだ。インターネット閲覧ソフトのモザイクやネットスケープを開発したマーク・アンドリーセンと、ソフトウエア企業オプスウェアのCEOを務めたベン・ホロウィッツが2009年に創業した会社である。同社の場合は、共同創業者の2人が自分たちの金を元に投資しているため、すべて他人から預かった金を運用している大手VCより決断が速く、リスクも取れるという特長がある。
日本でも、スタートアップ(ベンチャーの中でも、新しいビジネスモデルを開発して短期間で大きな成長を目指す企業)を対象にしたVCが次々に誕生している。そこではカネを出すだけではなく、新ビジネスのために優秀な即戦力の人材を紹介するなど、「0から1」を創り出そうとする人々のための環境が生まれ始めた。
そうした変化が起きた結果、世界的にビジネスの成否を見極めるスピードが著しく速くなった。今は創業2~3年で「0から1」を生み出して黒字化できるかどうか、メドをつけるのが一般的だ。3年目までに黒字化のメドがつけば、そこから先は、やはり「3つのクラウド」を活用することによって「1から100」へ、「100から1万」へと、エクスポーネンシャル(指数関数的)にスケールを拡大していくことが可能になる。
ところが日本では、明治以来の「欧米に追いつけ、追い越せ」型で突き進んできたメンタリティの影響によって、今も古いビジネスモデルにとらわれたまま成長を目指す企業が多い。
「カイゼン」や「軽薄短小」という言葉があるように、これまで日本企業はすでにあるものをより良くすることや軽く薄く短く小さくすることで成長してきた。つまり「0.3を0.5」にしたり「0.7を0.85」にしたりすることが得意なのである。もちろん、それはそれで悪いことではないし、その方法で世界トップになった企業もあった。しかし、これからの時代は「0から1」を生み出さないと、生き残っていくことはできないのである。
※SAPIO2016年2月号