「たしかに、医療費は過去最高です。しかし、GDPあたり医療費はようやくOECD(経済協力開発機構)加盟国平均を少し上回っただけ。また、医師不足解消といってますが、それもとんでもない情報操作なのです。
日本では国民1000人あたりの医師数が2.2人ですが、これはOECD加盟国平均の3.3人には遠く及ばず、先進国のなかでは最少。それに、医師数は年々増えているといいますが、日本では100才を超える高齢医師まで含めて水増ししてカウントされています。医療現場で実働している医師数が正確に把握されていないため本当に増加しているのかはなはだ疑問です」(本田さん)
こうして聞くと、日本の医療現場が、いかに深刻な局面にあるかが見えてくる。
医師不足と経営悪化で、医療現場は余裕を失い、結果として引き起こされる医療事故や医療ミス、また、忙殺された医師が発してしまった心ない言葉について、患者が裁判を起こす例も急増し、“モンスターペイシェント(患者)”が登場するなど、悪循環を招いているのだ。こうした問題が解消されない理由は、国の方針にあるという。
「厚労省は、以前から医療費亡国論を唱えて医療費削減を目標に掲げています。そのため、病院が潰れれば、医療費は削減できて、むしろラッキーくらいにしか思っていない。だから病院側は、国によってどんどん削減される医療費のなかで常に苦闘してきたのです。民医連のような取り組みは理想ですが、一般の病院で導入することは簡単ではありません。
でも、患者さんからすればそんな事情はわからない。病院は儲かっていると思っている。厚労省の政策で疲弊している医療現場の対応について患者さんが、『○○病院でこんなひどい目にあった』と厚労省に相談すると、『それはひどい病院ですね』と自分たちの政策を棚に上げて答えるんです。すると、厚労省の責任はスルーされて、あの病院はひどい、とますます病院が悪者になる。国が医療費抑制策を変えない限り、医療現場は変わりません」(本田さん)
※女性セブン2016年2月18日号