また、「臓器提供」は、同じ『金曜ドラマ』で2年前に放送された『アリスの棘』、1年前に放送された『ウロボロス』でも扱われた題材。それだけにドラマファンの間では、「この時間帯は臓器提供ばかり」と敬遠されてしまったところもあります。
視聴者にしてみれば、「臓器提供」や「クローン」、さらにそこから感じる重さや暗さの先にあるテーマがはっきり見えないため、「このドラマを見る理由」が見出せないのでしょう。しかし、この作品が本当に描きたいのは、「臓器提供」や「クローン」の是非ではありません。
描こうとしているのは、「人間は過酷な状況の中で、愛や友情、希望や絆をどのように育んでいくのか」「その上で、どのように人間らしく生きていくのか」。原作や映画版とは異なる力強いシーンも見せはじめていますし、これまで前半で深い闇をしっかり描いてきた分、後半では愛や友情、希望や絆がよりドラマティックに描かれるでしょう。森下佳子さんは、『世界の中心で、愛をさけぶ』や『白夜行』で、絶望的な物語を感動作に昇華させた実績があるだけに、終盤の展開に期待が持てます。
視聴率に関しては、1話と2話の裏番組として放送されていた『天空の城ラピュタ』と『魔女の宅急便』の影響は間違いなくあるでしょう。ジブリ映画の明るい世界観に敗北したことや、低視聴率を揶揄したネット記事の悪影響も重なって、今後も苦戦必至。ただ、「サクッと一話完結」の作品が大半を占める中、これほどの絶望的な状況を連ドラらしく丁寧に描いた当作は、見た人の心に深く刻まれるはず。「最終回が放送されたあと、低視聴率ではなく、内容面で話題になるのではないか」と感じています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。