◆「癇癪持ちで周囲の手に負えない」

 2009年8月にはノルウェーのモナ・ユール次席国連大使が本国政府宛て公電で潘事務総長について、「不明確でカリスマ性に欠ける」「癇癪持ちで周囲の手に負えない」と書いていたことが分かった。

 ユール次席国連大使は、同年7月、潘氏が軍事政権が民主化勢力への弾圧を続けるミャンマーを訪れたものの、民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんとの面会すらできなかったことについて「指導力を見せようにも叶わず、ただただあたふたする事務総長を象徴している」と断じている。核軍縮分野での活躍もなければ、金融危機でも無策、内戦のスリランカ情勢においても「傍観者」でしかなかったと激しく批判している。

 2010年7月に「『透明人間』潘基文国連事務総長の活動への動揺広がる」と題する論説文を掲載したのは英大手紙ガーディアン紙。2009年12月のコペンハーゲンで行われた国連気候変動会議での合意の失敗などから、「歴代事務総長の中で最低の部類に入る」と断じている。

 ワシントンでの講演会に出席した人たちが、「空虚な言葉ばかりで全く内容のないスピーチに、失望と退屈で携帯のメールをチェックしたりあくびをしていた」というエピソードで始まり、最近国連を辞めた人物の話として、英語力の弱さがあらゆる場面でリードできない原因になっていることを指摘している。

 潘氏の無策は人権問題への取り組みにも及ぶ。国際人権組織「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は2011年に発表した年次報告書で、「人権侵害を繰り返す国々に対し、国際的な地位が低い国に対しては強く批判するが、中国のような大国には何もしない」と批判している。

※SAPIO2016年3月号

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