そうしたこれまでの治療法の主流は、あくまで花粉症の症状を和らげる「対症療法」であった。薬は毎年、シーズンが来るたびに処方してもらわなければならないし、レーザーも数年に一度は同じ治療を受けなくてはならない。またレーザー治療は目の粘膜には使えないので、点眼薬などを併用しなくてはならない場合が少なくない。
それに対して舌下免疫療法はアレルギー反応そのものをなくし、治療を終えれば一生、花粉症で苦しまずに済むと期待されている「根治療法」なのだ。
この治療法は簡単にいえば、アレルギーの原因物質であるスギ花粉を少しずつ体内に入れていき、体に「危険なものではない」と認識させていくやり方だ。前出・大場氏が解説する。
「スギ花粉のエキスを含むシダトレンを毎日少量、舌の裏側の付け根に垂らしていきます。舌下からスギ花粉を吸収させることで、アレルギー反応に深く関係する、あごの下の左右のリンパ節にエキスが届きやすくなるのです。
体のなかにアレルギーの原因物質を少しずつ投与する治療法としては、これまでもスギ花粉エキスを注射する治療法がありましたが、この方法の場合は週に複数回、病院に通わなければならず、患者側の負担が大きくなってしまっていた。
シダトレンを使うと、初回の投与は病院で行なう必要がありますが、あとは処方された薬を1日に1回、自分で垂らせばいいので楽に続けられます」
発売当初は一度に処方してもらえるのは2週間分までだったが、昨年10月からは長期処方が可能になった。そのため、「月に1回程度、病院に薬を取りに行けばよくなった」(前出・Aさん)といい、患者の負担はさらに減っている。
※週刊ポスト2016年3月11日号