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「現代の戦争」を知らずに反戦を唱えるリベラルの弱さ

著述家・古谷経衡氏

 2012年夏には20万人の脱原発デモが、去年夏には12万人の反安保法案デモが国会前で起こった。だが、その盛り上がりにもかかわらず原発は再稼働し、法案は通り、しかも安倍政権の支持率は高い。これはリベラルの敗北である。

『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』(浅羽通明著・ちくま新書)はリベラル系知識人の言動から敗北の理由を考察した論考である。著者曰く、リベラルは敗北を直視せず、「バーチャルな脳内観念世界」へと逃げ込み、「デモのある社会になった」ことを勝利と称している、思想が宗教と化し、「原発止めろ」「戦争するな」「憲法守れ」といった言葉が単なる念仏やお題目になっている……。

 著者は挑発的で辛辣、ときに冷笑的な言葉でリベラルの抱える矛盾、欺瞞、劣化を炙り出す。気鋭の若手保守論客・古谷経衡氏はこれをどう読んだか。(インタビュー・文/鈴木洋史)

──著者はリベラルでもなく保守でもない「封建主義者」を自称し、通常の「右」とは異なる立場でリベラルを批判しています。

古谷:僕は安保法案に賛成で、微温的な安倍政権支持者です。だからというわけではありませんが、「我が意を得たり」です。その一方、著者の姿勢に共感できず、SEALDsの奥田愛基さんらを擁護したい気持ちも起こりました。

──賛同するのはどの部分ですか。

古谷:まず「リベラル系知識人はセカイ系だ」と看破した点ですね。日常を生きる普通の主人公がある日突然、危機に立たされた世界を救う救世主となるのが「セカイ系」と言われる物語の系譜で、アニメだと『新世紀エヴァンゲリオン』や『コードギアス』『交響詩篇エウレカセブン』が典型。それに倣えば、デモ参加者たちは戦争の危機から日本を救う主人公のつもりなんですかね。

「セカイ系」の特徴は、平穏な日常と「最終戦争」との間に中間過程がないことです。現実世界では、唐突にヒトラー政権が誕生するのではなく、画家志望だった青年の挫折からはじまり、一次大戦とミュンヘン一揆、ナチ党内部の抗争などといった中間過程がある。

 でも、リベラルは法案ひとつ通っただけで、すぐにでも安倍さんがヒトラーのような独裁者になり、どこかに戦争を仕掛け、徴兵制を復活させる、などと話を進めるわけです。中間過程を無視した荒唐無稽な言説です。

──確かに「セカイ系」じゃない人にはピンときませんね。

古谷:ただ「セカイ系」は右にもいるのです。ある自衛隊関係者から聞いた話ですが、3.11のとき右系の知人が彼に電話をかけてきて「自分に一個大隊を任せて欲しい。東北を救うために俺が出る」と言ったそうです。「ただの市民が日本を救う」。これは右版のセカイ系ですね。

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