業界紙、専門誌のめくるめく世界をあなたに。より細密に、より深く──最先端を行く紙媒体を追う! 今回は美容業界の専門誌を紹介します。
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『SHINBIYO』
創刊…1919年
発行…毎月1日
部数…未公開
読者層…美容師、美容関係者ほか
定価…1部1728円
購入方法…大手書店か、発売元・新美容出版に直接注文。
全国の美容室の軒数は約23万7000軒。コンビニ(5万3544軒)の約4倍だ(厚生労働省調べ)。「毎年約1万店が開業する一方、約6000~7000店が廃業しています」と語るのは月刊『SHINBIYO』の星比奈子編集長。(「」内、以下同)
ちなみに、女性1人あたりの美容師の数がいちばん多い県は秋田県。続いて山形県、新潟県、福井県…と、なぜか東日本の日本海側が続く。私たちの身近にありながら、意外と知らないのが美容室の内実だ。
かつて髪結いと称された頃から、女性たちが腕一本で生計を立ててきた業界が大きく変わったのは東京五輪の頃。好景気と職業の多様化から、男性美容師の数が急増する。
「はさみとくしを一度置いたら、二度と現場には戻れない職人の世界。それを外しては語れない業界ですが、男性美容師の中には、あえて経営に徹する人が現れてきました」
街の美容室から始まり、株式会社化し、さらには全国チェーン展開。やがて1部上場と企業化する店も出現する。
ヘアスタイルの流行も時代とともに大きく変わった。セシルカット、サーファーカット、ウルフカット、聖子ちゃんカット、ワンレン、前髪トサカ、ソバージュ、ストレートパーマ。髪形から時代が浮き立ってくるようではないか。
「流行のヘアスタイルがはっきりしていた時代、美容師はそのやり方さえ覚えたら収入になりました。しかし、今はまったく事情が違います。1人1人のお客さんが、より自分らしいスタイルにこだわるようになって、美容師はその要望に応えるために身につけなければならない技術が格段に増えました。以前は美容学校を卒業して、2年もあれば一人前になれましたが、最近では5~6年かかる人もいます」
意識の高い美容師には、美容室の外でも大切な仕事がある。それはモデルハント。営業後、街に出て、髪を切らせてくれる子を自ら探すのだ。新人は技術向上のための“練習台”を、ベテランは完成度の高い作品のため“原石”を探しに出かける。同誌のモデルたちの多くも、撮影を担当する美容師がハントしてきた一般人だ。
「プロ用の雑誌なので、すべて実際にカラーやパーマをかけ、カットをして撮影しています。誌面づくりには技術コマの解説は不可欠なのです」
モデルハントは、ナンパや物売りと間違えられたりすることもあって、「大の苦手」という美容師も多い。反対に、「作品のイメージが湧くから、楽しくて仕方がない」との声もある。
さらに、今、猛威をふるっているのがインターネットだ。若手美容師の多くは、スマホやデジカメで、自分の“仕事”を撮影し、フェイスブックやブログ、インスタグラムなどで積極的に発信している。
そのために、作品がより素敵に見えるよう、ライティングなどの勉強も必須。同誌でも『作品撮り。サロンでどう写真を撮るか』といった特集があり、撮影技術が紹介されている。
そこにアップされた中から、客は次の自分のスタイルを探し出し、発信者の美容師を訪ねてくる。中高年の客もまた、店ではなく、自分の好みや髪質を熟知している担当美容師につく傾向がある。そのため美容師が店を移ると、客もその店までついていくのだそう。
「独立するには、300人以上の顧客を確保しなければならないといわれています」
美容室によっては、正規雇用ではなく、予約が入った時だけ店に出る、フリーランスの美容師を採用するケースも増えてきているそう。美容師の働き方も、世相とともに多様化している。
10年ほど前からは、店にも美容師にもつかず、サービスや技術料金など、目的に合わせてその都度、店を替える“クーポン渡り鳥”といえる若い客も増えている。
「店舗数が増えて過当競争になり、新規の客に向けたクーポンを発行した結果ですが、店側もリピーターになってもらうために、はがきを出したり、ポイント制を導入するなど工夫をしています」
最後に、私たちが新たに美容室を開拓するときのコツを聞いてみた。
「初回はシャンプーとスタイリングで、美容師の技術とセンスが自分と合うかチェック。カットやパーマは次回からにするのがおすすめです」
(取材・文/野原広子)
※女性セブン2016年4月28日号