近年、緩和ケアが医療現場で普及しつつあります。そこで重要なのが「死ぬという苦(いのちの苦)」の緩和です。これを「いのちのケア」といいます。「いのちのケア」を担当する臨床仏教師や臨床宗教師が育ちつつあり、私達の入院施設や介護施設でも実習生を受け入れています。

「いのちのケア」では、死に至る病の人の「語り」を傾聴・理解・共感し、患者本人の人生の物語を完成させるお手伝いをします。そこでは、「皆それぞれ自分というのは、かけがえのない尊い存在である」と尊重されるのです。

 灌仏会(かんぶつえ)では、お釈迦様の誕生を祝って誕生仏(右手で天を指し、左手で地を指している仏像)に甘茶を掛けます。甘茶は江戸時代に発見された和漢薬です。私達の施設では、誕生鬼や赤ちゃんイエスの像にも甘茶を掛けます。甘露はアムリタの漢訳です。アムリタを文字通り訳すと、不(ア)死(ムリタ)ですが、インド神話で「甘露」と訳された飲み物の名前でもあります。

 甘茶の味は非常に甘く、甘露という漢字にも共通するので、これを飲んで「不死」の智恵が得られるように祈願しましょう。甘茶の甘みはカロリー無しの甘みなので、砂糖に代えて用いればメタボリック症候群のコントロールにも役立ちます。

●たなか・まさひろ/1946年、栃木県益子町の西明寺に生まれる。東京慈恵会医科大学卒業後、国立がんセンターで研究所室長・病院内科医として勤務。1990年に西明寺境内に入院・緩和ケアも行なう普門院診療所を建設、内科医・僧侶として患者と向き合う。新刊に『いのちの苦しみは消える 医師で僧侶で末期がんの私』(小学館)。

※週刊ポスト2016年4月29日号

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