「もう50年も出ているわけですから。若い人に譲らなくっちゃって。若い人が育っていかないとダメだからなって。お父さんがどけば、また若い人が入るでしょう。そうしないとダメだってね。だからね、私もそれでいいんじゃないかなって思ったんですよ」
歌丸にとって最後の『笑点』出演となる5月22日、冨士子さんはどうやって夫を送り出すのか? これまで一度も『笑点』を見に行ったことがないという彼女にたずねると、「いや、その日はね。出かけることになっていて」と言う。これまで二人三脚で支えあってきたふたりのことを考えると、少し冷たい言葉にも感じたが、その真意はまったく違うところにあった。
「いや、一緒にお父さんと(笑点に)行っちゃうかもしれないし。やっぱり最後ですから…一度はね」
それまで下町っ子らしく、豪快に笑いながら、はつらつとした滑舌のいいしゃべりだったのに、このときばかりはしんみりと目を伏せた。「当日は泣いてしまうかもしれませんね」と記者が声をかけると、再び笑顔を見せた。
「あはははは。どうだかね。鬼嫁の目にも涙って書かれちゃうかしらねぇ」
カミさんは家にいるもの。夫の職場には一切来ない──。結婚生活59年、冨士子さんはそんな“夫婦の掟”を初めて破る。優しくて、あったかい夫婦愛に、座布団1枚!
※女性セブン2016年6月2日号