ライフ

秋田発の「オヤジアイス」 もし「性の商品化」と言われたら

ネットのクレームに大人的対応(写真:アフロ)

 ネットは馬鹿げたクレームを増幅させがち。秋田の新発売アイスクリームを例に、「クレームに対する大人的態度」を大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が考えた。

 * * *
 先日、大手旅行代理店エイチ・アイ・エスが企画した「東大生の美女が機内で隣りに座ってくれる」という企画が、抗議があったということで中止になりました。想像するだけで心浮き立つ企画だったのに残念です。早々に腰砕けになって中止を決めたエイチ・アイ・エスはさておき、せっかくヤル気になっていた「東大美女図鑑」のモデルを務めている女子大生のみなさんには、ひじょうに気の毒な展開でした。

 ことほど左様に、世の中はどんどん窮屈になっています。ネットの最大の問題点は、どうでもいいマヌケな意見を大きく増幅してしまうところ。それは、どうでもいいマヌケな抗議を受ける側にとっても、どうでもいいマヌケな抗議ができてしまうことでチンケな承認欲求を肥大させてしまう当人たちにとっても、大きな悲劇だと言えるでしょう。

 そんな状況の中、秋田県で物議をかもしそうなアイスクリームが発売されました。秋田市のノリット・ジャポンが一年がかりで開発し、県産の牛乳を使って作った自慢の逸品で、商品名は「UMAMY(ウマミー)アイスクリーム」。それはいいんですけど、なんと「オヤジアイスクリーム」という大胆不敵な愛称がつけられています。開発・製造に携わるスタッフが、40~50代の男性であることにちなんでいるとか。

 杞憂かもしれませんが、こういうご時勢だけに、どうでもいいマヌケな抗議を受けてしまわないか心配です。「中年男性を意味する『オヤジ』を売りにするのは、性の商品化ではないのか」「陰で『オヤジ』を支えているオバサンを無視して『オヤジ』だけを前面に出すのは、男女差別ではないのか」などなど。

 まさか誰もそんなことは……という気はしますが、ネットで抗議をしてくる人のマヌケさは常人の想像をはるかに超えています。どうつつかれて炎上するかわかりません。備えあれば憂いなし。ジェンダーの問題にかみつくことで「賢いオレ」「賢い私」という錯覚を得たい人たちがなんか言い出したら、「オヤジアイスクリーム」としてはどう反論すればいいのか。たいへん大きなお世話ですが、いくつかのパターンを考えてみましょう。

「オヤジアイスクリーム」を大々的に取り上げたネットメディア「秋田経済新聞」の記事によると、社長はその特徴について「県産の朝採れ生乳をぜいたくに使った。コクがありながらスッキリした後味で食後にのどが渇きにくく、さわやかで食べ飽きない自然な甘さの商品に仕上がった」と語ったそうです。ちなみにラインナップは、「ミルク」(280円)、「フロマージュブラン」「比内地鶏たまご」(各300円)の3種。

 たとえば「オヤジのイメージと『コクがありながらスッキリした後味』という特徴を重ね合わせるのは、一種のセクハラではないか」と言われたとしましょう。その場合は「セクハラは当人が不快に感じるかどうかがポイント」という論拠を前面に出します。

「オヤジの多くは、コクがありながらスッキリした後味の乳製品と結び付けてもらえるなんて、そんな光栄なことはないと思うでしょう。よって、セクハラには当たらないと考えます」

 紛らわしい言い方をしましたけど、もちろん人柄とか印象とかの話です。ただし、この商品が大ヒットして「オヤジアイスクリーム」が一般的な言葉になったときに、女性に対して「俺のオヤジアイスクリームを……云々」という発言をしたら、それは立派なセクハラなので気を付けましょう。

関連記事

トピックス

体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
タイトルを狙うライバルたちが続々登場(共同通信社)
藤井聡太八冠に闘志を燃やす同世代棋士たちの包囲網 「大泣きさせた因縁の同級生」「宣戦布告した最年少プロ棋士」…“逆襲”に沸く将棋界
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授
ノーベル賞候補となった研究者に訊いた“睡眠の謎”「自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足です」
週刊ポスト
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン