直近の2年間で、国内の売上高上位100薬品(2014年度決算・日刊薬業調べ)のうち、16種類の薬で新たな副作用が報告されている。厚労省が医薬品添付書の「改訂指示」を出した薬品の中から生活習慣病の高血圧に関する薬の副作用について検証する。医薬情報研究所の取締役で薬剤師の堀美智子氏が解説する。
「高血圧の薬の中で、血圧を下げるために血管を広げる薬は、頭痛や顔の火照り、むくみといった副作用が出ることが一般に知られています」
高血圧は多くの治療薬が市場に出回っているが、それに加えて新たな副作用が報告されている。「アジルバ」は、筋肉組織が壊死して融解した成分が血中に流れ出し、腎不全などを引き起こす「横紋筋融解症」が見つかり、その後に肝機能を低下させる副作用も追加された。「ラシックス」には、「間質性肺炎」が追加された。
「肺の組織に炎症が起こり、呼吸困難になったり、咳が出る症状が『間質性肺炎』です。細菌感染ではなく、アレルギー性の炎症なので抗生物質が効きません」(同前)
呼吸困難が深刻化して心不全になり、命を落とすケースもある。
「息切れや咳が発生した場合、風邪と間違えて風邪薬を飲むケースがある。セルフジャッジを控えるのが鉄則です。ラシックスを服用していて、階段を上って息切れをしたり、咳が出る人は、早めに医師に相談しましょう」(同前)
同じく高血圧の薬「アムロジン」と「ノルバスク」は、肝細胞の壊死などが急激に進む「劇症肝炎」が追加された。
発症率が低いとはいえ、両薬は「高血圧患者の3人に1人が服用するポピュラーな薬」(秋津医院の秋津壽男院長)だ。劇症肝炎は一度発症すると70~80%が命を落とす“死の病”だけに細心の注意が必要だ。
「劇症肝炎の症状は 怠感や発熱のほか、横紋筋融解症と同じく、尿の色がコーラのように黒ずむのが特徴です」(前出・堀氏)
※週刊ポスト2016年6月24日号