現在、中国では、こんな荒唐無稽な抗日ドラマが溢れているという。『モノ言う中国人』(集英社新書)の著者で、北海道大学公共政策大学院専任講師の西本紫乃氏がいう。

「ヒロインがたったの1分半で、34人もの日本兵を弓で射殺したり、カンフーの使い手が素手で日本兵を真っ二つにするといった、現実離れしたシーンが話題となった映画もありました。

 地上から手榴弾を投げ、はるか上空を飛ぶ日本軍の戦闘機を撃墜するシーンなどには、さすがの中国人も“ありえない”と感じています。この手のドラマや映画は、現実的ではないという意味で、『抗日神劇』と呼ばれているぐらいです」

 去年放送されたドラマ『一起打鬼子』は、妻が股間に隠し持っていた手榴弾で、夫婦が自決するという「神劇+わいせつ」のWパンチで当局から捜査を受けたという。こうした過激な抗日っぷりは、日本への敵対心だけが理由ではなさそうだ。

「中国では映像作品の検閲がありますが、抗日ドラマは中国共産党のイデオロギーに反しないため、通りやすいことが理由の一つです。また、映像作品は投資対象とされており、当たると大きく儲かるため、話題性を狙って派手な脚本になっているのでしょう」(西本氏)

※週刊ポスト2016年7月15日号

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