これは1961年に米国マサチューセッツ工科大学のジョン・リトル教授が発表したもので、列の長さが常に変わらないという条件付きで、【待ち時間(分)=行列の総人数÷1分間の到着人数】で割り出すことができる。つまり、先頭の進み具合が見えなくても、1分の間に自分の後ろに並んだ人数をカウントしておけば、待ち時間が分かる。
この方程式に当てはめると、冒頭で記した「行列の長さが人気のバロメーター」という定説が怪しくなってくる。前出の篠原氏が解説する。
「例えば、2つのハンバーガーショップがあり、A店は12人の客が並んでいて毎分4人が行列に加わっています。そして、B店は10人の客待ちに対して毎分5人が列に加わっていたとします。
単純に行列の長さだけ見ればA店のほうが流行っているように思いますが、待ち時間はA店が12÷4=3分、B店が10÷5=2分。販売効率から考えて客の人気ぶりを比べると、B店のほうが繁盛していることになるのです」
確かに意地の悪いことを言えば、行列の長さは店の“さじ加減”ひとつで、いかようにもコントロールできる。調理作業をゆっくり行えば行列はどんどん伸びるし、ラーメン店などの中には、1人ずつ入店させずに店内の客がすべて食べ終わってから総入れ替えする店もある。
「もちろん、サービスの戦略上どうしても回転率が悪くなってしまう店はあるでしょう。しかし、敢えて行列が絶えないようにコントロールする店があるとしたら、そんな噂はすぐに広がってしまいますし、長い目で見れば店の評判や売り上げを落とす結果に繋がってしまいます」(篠原氏)
今年の夏、「長蛇の列」に並んでイライラを感じたら、リトルの法則でも思い出し、待ち時間や人気の理由を冷静に検証してみてはいかがだろう。