個人情報への配慮から、クラス名簿や連絡網はすでに“絶滅”状態にある。日頃、子供と接する機会が少ない父親の大きな楽しみだった「うちのお父さん」という作文は、いまでは書かせることはない。
「父の日、母の日に向けて作文を書かせることは、ずいぶん前からしなくなりました。片親も多いし、祖父母に育てられている子供もいる。家族を限定しての作文はもう無理です。『自分の家族について』というテーマを出すことはありますが、これは『ペットでもいい』ということになっている」(福岡県・元小学校教諭)
子供が読み上げる作文を聞いて、親が涙するようなシーンも昔の光景だ。石川氏は学校と保護者の関係の歪みを指摘する。
「学校や教育委員会が保護者の目を気にしすぎている面がある。たしかに、毎日のようにクレームの電話をかけてくる保護者もいるので、矢面に立たされる教師は大変です。しかし、保護者への配慮に神経をとがらせるあまり、子供に目が向かなくなるのでは本末転倒です。教師は誰のためにいるのかを、みんなが考える必要がある」
※週刊ポスト2016年8月5日号