地方色が薄れているといわれるなか、それでも地方によって流儀が異なるものがある。エスカレーターを利用するとき、右側に立つべきか、左側に立つべきか。英国の「EU離脱投票」を見習って日本の大問題も国民投票で決めてしまおうという『週刊ポスト』の特集より、宮本勝浩・関西大学名誉教授が問題提起する。これも昨今話題の「国民投票」にしてもいい案件か?
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エスカレーターを歩く人のために、「左側に立って右側を空ける」か「右側に立って左側を空ける」か。この“身近な大問題”をみんなが納得するかたちで解決するにはどうすべきか。
右か左かは、「関東と関西の違い」とよくいわれる。たしかに大阪では以前、阪急が動く歩道で、「左側を空けてお立ちください」とアナウンスを流していた。ただ、出張で全国に行った経験からすると、右側に立つのは関西の中でも大阪、兵庫、奈良くらい。京都では左側に立っている。
ただ、全国的に見れば少数派の“大阪流”のほうが理にかなっている。エスカレーターを歩かない人はお年寄りが多いが、利き手の右手で手すりを持ったほうが安全だろう。
〈大阪で「右側に立つ」という習慣が定着している理由には諸説あるが、1970年の大阪万博で動く歩道が登場した際に「左側を空ける」スタイルが採用されたからだとされる。「当時、外国からの来訪者のために海外の事情を調べたところ、ロンドンもニューヨークも『左側を空ける』という習慣だった」(在阪の大手紙記者)という。〉