にもかかわらず、“とりあえず東京五輪の2020年までは突っ走ろう”という雰囲気が漂っている。安倍首相は「アベノミクスのエンジンを最大限にふかす」と宣言し、2020年には現在500兆円のGDPを600兆円にまで引き上げる目標を掲げている。1960年に池田勇人首相が閣議決定した「所得倍増計画」を想起した人も多いだろう。

 だが、同じ五輪開催前の計画であっても状況は大きく異なる。当時は高齢者が少なく、若い働き手が多かったため、放っておいても経済が拡大する人口ボーナス期だった。現在の日本は高齢化社会で名目GDPがなかなか増えず、今後さらに人口が減少していく。無理にインフラを整備しても、それは需要の先食いになるだけだ。すでに都心部のオフィスは飽和状態にあり、供給過多との見方もある。

 東京23区では、今後も毎年平均100万平方m以上のペースでオフィスビルが建設される予定だ。2019年は計画だけですでに200万平方mを超えている。五輪後の需要下落でオフィスが大量に余る「2020年問題」が囁かれている。

 問題は、五輪特需が終わり、震災復興特需も一段落つき、アベノミクスが息切れする2020年以降をどうするのか、ということだ。

 財政再建は待ったなしの状態だ。政府・与党は2020年までに基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の黒字化を掲げているが、消費増税の再延期と、ますます増大する社会保障費の現状を見て、その実現性を信じている人は少ないのではないか。

 そんななか、当初、施設整備費を含めた五輪運営予算は約7300億円と言われていたが、今や2兆円とも3兆円とも言われるほど膨れあがっている。大会組織委員会は増加分の一部を東京都に負担してもらいたい意向だ。まるで破産前の“最後の宴”のようだ。

 いまさら東京五輪を返上するわけにもいかないが、せめて招致する際のウリだったコンパクトで低予算の五輪にすべきではないか。

※SAPIO2016年9月号

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