「第2章 安全保障
第9条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」
この改正の狙いについて自民党の「日本国憲法改正草案Q&A増補版」では、次のように解説している。
まず、現行憲法の第9条1項については文章の整理のみとする。さらに2項で「戦力の不保持」等を定めた規定を削除した上で、改めて「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」として自衛権を明示。「この『自衛権』には、国連憲章が認めている個別的自衛権や集団的自衛権が含まれていることは、言うまでもありません」。
これまでの歴代内閣は、集団的自衛権の行使は憲法第9条で禁じられていると解釈してきた。安倍首相は、その解釈を変更し、集団的自衛権は現行憲法の下でも当然認められるということで安保関連法を成立させた。従来の憲法では認められていなかったものを、改憲した上で法律にも反映するという理屈ならわかるが、実際は、新たに施行された法律に合わせて憲法を修正しようということになる。
つまり自民党は、第9条改正によって安保関連法を憲法に反映するという「後付け」で正当化しようとしているのだ。そこにはブレア元首相が犯した過ちへの反省や、アメリカが過去20年間繰り返してきた間違いだらけの中東政策についての反省は微塵もない。これはあまりにも杜で危険だと思う。
とくに日米ガイドラインでは、日本は後方支援するといっても現地に派遣された軍隊はアメリカ軍の司令官の指揮下に入ることになっている。つまり、ひとたび戦地に赴いた場合は、国会も内閣も自衛隊の統制権を失う危険性があるのだ。アメリカの資料に出てくるこうした点の議論も、日本では寡聞にして知らない。
※週刊ポスト2016年8月19・26日号