これまで『週刊ポスト』では、ジャーナリスト・岩澤倫彦氏による歯科治療のタブーに斬り込むシリーズ記事を度々掲載してきたが、全国の歯科医たちから賛否両論が噴出している。
そこで今回は、編集部や筆者に意見を寄せた、あるいはネット上で記事の批評を掲載していた歯科医を緊急取材。論争テーマへの率直な意見と、歯科業界の実状を本音で語ってもらった。それによって、見えてきた問題の核心とは──。
まず今回、本シリーズへの見解を聞いた歯科医を紹介する。
千葉の西尾元秀氏(ニシオ歯科・院長)は、東京医科歯科大・口腔外科出身の歯科医歴37年のベテランで、浦安市で保険診療主体のクリニックを経営。ブログで本誌連載を「大げさに悪意を持って書かれたもの」と厳しく批判した。
神奈川の長崎祥吾氏(ワコ歯科・矯正歯科クリニック院長)は、文系大学を卒業してスーパーの野菜販売を担当した後、歯科医となった経歴の持ち主。「個人的に反論させて頂きたい部分がありますので、取材をして頂けないでしょうか」というメールを筆者に寄せた。
* * *
低く抑えられた診療報酬、歯科医の過剰状態という悪条件が重なり、歯科医院の経営は厳しい時代になっている。こうした中で目立つようになってきたのが、「格安」を売りにしたインプラントセンターの存在だ。
特徴的なのは、インターネットや雑誌、電車内などに派手な広告を打っていること、インプラント手術のみを行なっていることなどが挙げられる。また、個人経営の歯科医院でも、講習会などに参加しただけで専門的な経験を積まずにインプラント手術を行なっている。
問題なのは、根管治療などで歯を残せる可能性がありながら、インプラント治療に誘導していることだ。筆者は体験レポートとして、格安インプラントセンターを潜入取材した際、若い歯科医からとても軽い調子でインプラントを勧められたが、西尾氏は信じられないという。