墓について厳しいルールを定めている、1948年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」はもはや“時代遅れ”だ。
「墓埋法は墓地以外の区域に遺骨を埋葬することを禁じており、事実上、墓を持つことを強制しています。多くの人が希望している〝散骨〟についての記載もありません。戦後すぐにできた時代遅れの法律を改正し、現代に沿った柔軟な法律にする必要がある」
そこで人気なのが「永代供養墓」だ。
「これは大規模な納骨堂のことで、都会の一等地などにある巨大なビル型施設の内部に備えられた大量のロッカー型納骨堂に遺骨を納めます。従来の墓を作って守っていくやり方とは違い、一度入るとケアを他人に任せられるため、“墓を捨てる”に近いやり方と言えます」(島田氏)
都内在住の70代男性が安堵の表情を浮かべる。
「今年、郊外の霊園にあった両親の墓を都心の永代供養墓に移しました。親が悲しむのではないかと躊躇しましたが、独身の一人息子に将来の墓を託すのは忍びなく、悩んだ末に決断しました。改葬後は肩の荷が下りてホッとしました」
だが、海外に目をやると英国では、1200度の超高温の炎で遺体を灰になるまで焼きつくし、遺族の望む場所に「散骨」することが社会的に認められている。
今回の「墓を捨てる」という提言が、あるべき葬儀や埋葬の議論につながることを島田氏は望んでいる。
「世界中に火葬の国はありますが、骨だけ残して墓に入れて拝むのは日本独特の文化です。日本でも火葬場で遺体を骨まで焼き切り、遺骨の処理は火葬場に任せ、遺族は一切引き取らないという選択肢を作るべきです。墓という負担を軽減し、遺族が安心して暮らせる道を示すことこそ、親や先祖が本当に望むことではないか」
子孫に負担を遺しては、“幸せな死に方”は得られない。
※週刊ポスト2016年9月2日号