少ないながら、「利上げ=円安ドル高」に異を唱える専門家もいた。レオス・キャピタルワークス運用部長の渡邉庄太氏はこういう。
「市場には“バイ・オン・ルーマー、セル・オン・ファクト(噂で買って事実で売る)”という格言があります。昨年12月の利上げの際も、事前に〈利上げ観測〉が繰り返され、市場は“織り込み済み”になっていた。つまり、利上げ前にドルが買われ、利上げが確定したら逆に売られたのです」
今回も、8月末のイエレン発言によって市場は織り込み済みになっている可能性があるのだ。そこで、「市場心理の裏を突くべき」とするのはSBI証券投資調査部シニアマーケットアナリスト・藤本誠之氏だ。
「利上げで輸出関連銘柄が上がると考えるのが一般的ですが、けるなら逆の発想が必要で、利上げ時にこれらを空売りするのです」
空売りは“株価が下がるとかる”仕組みの取引だ。藤本氏はトヨタ自動車(東1・7203)を例に説明する。同社株は英国のポンドショック直後の6月28日に4917円の年初来安値まで売り込まれたが、その後上昇して8月31日終値で6238円まで値上がりしている。
「この値上がりは米国の利上げ分も少しずつ織り込んできた可能性があり、利上げ後にさらに上がるかといえば疑問。米利上げのように大々的に公表される材料の時は、逆を行くわけです。逆張りは小さな銘柄よりも大きな主力銘柄のほうがリスクは少ないので、他にも小松製作所(東1・6301)やデンソー(東1・6902)などの銘柄も同様に空売り候補と考えることができる」(同前)
王道を行くか裏道で待ち構えるか。プロたちの戦略を参考に、今年最後のビッグチャンスに備えたい。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号