今や世界の共通語ともなっている「BONSAI」。その聖地として知られるさいたま市の大宮盆栽村には、日本の盆栽文化に魅せられ、日夜、修業に励む外国人たちの姿がある。海外から3人が弟子入りする、日本で最も古い盆栽園「加藤蔓青園」を訪ねた。
「盆栽は生きた美術です」
こう語るのは、修業5年目のアメリカ人のアダム・ジョーンズさん(33)。子供時代に観た映画『ベスト・キッド』で盆栽を知り、母国の大学で美術を学んでいたころに趣味で盆栽を始めたという。英語教師として20代後半に来日したアダムさんは、大宮盆栽村と大宮盆栽美術館で目にした本場の盆栽に衝撃を受け、修業の道に入った。
「盆栽は生きもの。心があります。水をやるときも、元気ですか? と声をかけて対話します。盆栽で最も好きなのは、針金かけの後、時間をかけて美しい形に変化していく姿ですね。盆栽の歴史や哲学、設えの鑑賞も一生懸命、勉強しています」(アダムさん)
韓国で樹木医をしていた李京周さん(44)も修業5年目に入り、アダムさんとともに大宮盆栽美術館が所蔵する名品盆栽の手入れを任されるまで技術や知識を習得した。留学していたベトナム人のグエン・テ・フォンさん(29)は、同美術館で見た盆栽に一瞬で虜になり、今年3月に弟子入りしたばかり。
蔓青園5代目の加藤崇寿氏は「盆栽は単なる園芸ではなく、樹と人が対話する芸術。鑑賞する人にも審美眼が求められます。だから弟子たちにも審美眼に基づいて樹を作ることを指導しています」と、盆栽の要諦を惜しみなく伝授する。アダムさんは日本で、李さんとグエンさんは母国で自分の盆栽園を持つのが将来の夢という。盆栽マスターを目指し、挑戦は続く。
■撮影/藤岡雅樹
※週刊ポスト2016年10月7日号