ライフ

高齢男性の一人暮らし うつ状態になる割合は17.7%

高齢男性の一人暮らしの潜むリスクとは(イメージ)

 収入も健康に大きな影響を与えることをリポートした『NHKスペシャル 私たちのこれから「健康格差 あなたに忍び寄る危機」』(以下、『Nスペ』)が9月19日に放送され、大きな話題を呼んでいる。

『Nスペ』では本人の所得や雇用状態に重点を置いていたが、健康格差を生み出す要因は他にもある。まずは家族構成だ。

 独身男性は既婚男性に比べて平均寿命が短いとのデータがある。国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、40歳時点で既婚者と未婚者の平均余命を比較したところ、未婚者のほうが8年以上も短かった(1995年のデータ)。NPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典氏が指摘する。

「独身者の場合、家庭のなかに栄養状態を管理する人がおらず、簡単かつ安価に食事をすませようとする。偏食が常態化してしまい、生活習慣病になるケースが多い」

 男性では低所得層ほど未婚率が高く、これも死亡率の高さと関係があるという。

 また、独身で一人暮らしを続けていると、うつ病リスクが上がるとも考えられる。『健康格差社会』(医学書院刊)の著者で千葉大学予防医学センター教授、国立長寿医療研究センター部長の近藤克則氏はこんなデータの存在を紹介する。

「夫婦と子供が同居している世帯の高齢男性の場合、うつ状態になる割合は5.5%ですが、それが一人暮らしとなると17.7%と、3倍以上に跳ね上がるのです。一人暮らしだと気楽なように見えて、やはり孤独を感じやすいのでしょう」

 生まれ育った家庭の環境でも、病気にかかるリスクの高さは変わってくる。

「貧困家庭の子供は、親からのケアが行き届かなかったり、胎児期・幼児期に栄養失調に陥りやすいと考えられます。栄養失調はインスリン分泌不全などを引き起こし、大人になってからの肥満や糖尿病リスクを高めてしまう」(近藤氏)

 住んでいる場所によっても、違いが生まれるという指摘がある。

「実はうつ状態の人は、都市部より田舎に多い。ストレス解消につながる運動量の違いをみてみると、都市部では公共交通機関が発達しているので、その合間に歩く機会が多いのですが、田舎では目的地まで直接車で移動する。そのため田舎に住む人のほうが運動不足に陥りやすいと考えられます」(近藤氏)

 塩分の多い食事や、飲酒を好む人が多い秋田県が胃がんや食道がん罹患率が全国で最も高いように、習慣の違いが疾病リスクの差を生み、“どんな最期を迎えられるか”を左右するのだ。

※週刊ポスト2016年10月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
パリ五輪への出場意思を明言した大坂なおみ(時事通信フォト)
【パリ五輪出場に意欲】産休ブランクから復帰の大坂なおみ、米国での「有給育休制度の導入」を訴える活動で幼子を持つ親の希望に
週刊ポスト
被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン