国内

SNSで「成功」そそのかす詐欺 中年男性の被害少なくない

SNSでの豪遊に魅せられ詐欺被害に

「ネオヒルズ族」を覚えているだろうか? 2000年代に六本木ヒルズに拠点を置いて活躍したITベンチャーや投資関係者たちを「ヒルズ族」と呼んだが、彼らが六本木から離れた後に「ネオヒルズ族」と名乗った人たちだ。派手な生活をみずから喧伝していた彼らは、今でもビジネスを続けている。ネオヒルズ族のビジネスによる被害に遭い訴訟を準備中だという男性の告白を、ライターの森鷹久氏がリポートする。

 * * *
「着きました★どこにいますか?」

 東京・渋谷の明治通りに面した喫茶店。ある男性を待つ私の携帯に、ショートメールが届いた。慌てて入り口付近を覗いてみるが、汗だくのサラリーマンや厚化粧と派手なフリル服でキメた中年女性のグループ、紙袋を下げくたびれたキャップ姿の男がうろついているだけで、ホームページの写真と同じ“被害者”らしき人影は見当たらない。

 店員に一声かけ入り口を出ると、キャップ姿の男がこちらを向きニコリと笑顔を作った。勝又陽二・45歳(仮名)。ダーク系のスーツに黒いワイシャツ、赤いサテン地のネクタイで自信に満ちた、ネット上での彼の面影は微塵も無く、平凡な中年男性の姿がそこにはあった。

 あらゆる意味で、勝又の人生が変わったのは2年前の事。いわゆる「ネオヒルズ族」と呼ばれる人々がバラエティ番組やワイドショーに登場し始めた時だった。

 六本木ヒルズ・レジデンスに住み、足はフェラーリやベントレーといった超高級車。ウブロ、パテックフィリップなどの最高級腕時計を何本も所有し、モデルのような女性を連れて、毎晩のように遊び回る…。彼らが、自身のホームページやSNS上にアップする華々しい日々の様子を見て、かつての勝又は嘆息を漏らすだけだった。

「彼らの姿はまさに成功者。カネなしコネなし学歴なし、ないない尽くしの僕とは天と地の差があると思いましたよ」

 ネオヒルズ族は、アフィリエイト広告での収益を得る為に、自身のSNSやブログを使ってありとあらゆる手段で人を呼び込もうとする。某ネオヒルズ族と近しい関係にあったアパレル会社経営のX氏は、その実態を“虚業そのもの”だと指摘する。

「私が知っているヒルズ族の男の場合、愛車と吹聴していたベンツSクラスはレンタカー。家も事務所も六本木ヒルズでしたが、実際は知り合いの社長宅の一室を借りていて、11階にあるレンタルオフィスでした。パネライの時計は香港製のパチモン。靴もスーツも偽ブランド物。実情は池袋のキャバクラ嬢のヒモ。オンナの家で、せっせとウソっぱちの日常をSNSにアップし続けていました」

 しかし、この偽りの姿は派手であればあるほど良いのだという。インチキ臭いと呆れる一般的な感覚を持つ人々も入れば、なぜか信じてしまう人達だっている。テレビや雑誌が「イロモノ」である彼らを取り上げた事もあるだろうが、前出の勝又も信じた一人であった。

 茨城県出身の勝又は、中堅高校を卒業後に千葉県にある工業系大学に進学。就職氷河期の中、地元の工場に何とか採用されて、20年以上勤務している。手取りは25万円前後で、ボーナスは不景気の煽りを受けて出たり出なかったりだが、兼業農家を営む実家で暮らす身。金銭的な不安はない。しかし、彼には不満があった。

関連記事

トピックス

モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト