史上空前の低金利の後押しを受け不動産投資市場はバブル状態を迎えている。だが、それは、東京だけの「一極集中バブル」ではない。三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部課長の大溝日出夫氏がいう。
「アベノミクスの影響で、東京の不動産はかなり値上がりしました。そこで投資マネーは、“厳選された地方都市”にも向かっています。リニア新幹線を見据えた名古屋圏や、地方の中心都市である福岡、仙台などへの投資が広がっています」
昨年度の外国人観光客は初めて2000万人を超え、今年度も堅調だ。これに伴い、一般家庭に旅行者を泊める「民泊」の需要が増えていることも投資の追い風になっている。
特に目立つのは関西地方の動きだという。不動産情報を扱う、東京カンテイ市場調査部の高橋雅之氏が解説する。
「関西国際空港にLCCターミナルができ、中国人観光客の玄関口になった。そのため古いマンションに民泊狙いで投資する動きが出て、大阪・京都にある中古物件の価格の上昇を押し上げていると見られる」
今後の不動産投資の成否を分けるのは、「人口動態」だと高橋氏が続ける。
「賃貸物件は借り手ありきなので、将来的に人口減になる地域は厳しい。投資にあたっては国の人口統計や駅の乗降客数、大学の数は必ず押さえたい。鉄道も重要で、複数の路線が乗り入れたり、急行や快速が止まるようなターミナル性の高い駅なら人が集まります」
不動産コンサルタントの長嶋修氏も同様に、人口動態に注目する。
「東武線沿線にある埼玉の草加や越谷は人口の転出より流入が多く、周辺自治体と比べて高齢化率も高くありません。越谷のイオンレイクタウンは集客力があり、周辺の不動産価格は下がりにくい」
また都内でもこれまで敬遠されがちだった地域に注目が集まり始めている。