12月15日の日露首脳会談が近づき、北方領土問題に進展があるのか注目される中、ロシア大使館が公式ツイッターで興味深い告知をした。
〈東京ではロシアの女子学生がロシア料理店を開店。ボルシチやピロシキなど代表のロシア料理を用意し、日本のお客さんがロシアの魅力を味わえる〉(10月3日)
大使館がわざわざ告知するとは、一体どんな店なのだろうか──行ってみるとそこは、「料理店」ではなく、「メイド喫茶」だった。
東京・新宿区の早稲田駅から歩いてすぐの場所にある『ItaCafe』。入り口は全面ガラス張りの開放的な造りだ。中に入ると、オープンキッチンでメイドのコスプレをしたロシア人女性たちが忙しそうに働いていた。ホットミルクを頼むと出てくるまでに40分以上かかるというオペレーションはさておき、金髪女子たちのメイド姿は新鮮だ。
『ItaCafe』を運営するイベントプランニング会社、フリープランニングの代表・大森拓也氏は開店の経緯についてこう話す。
「店員の女の子たちの就労ビザ取得が目的でした。日本が大好きで永住したいと思っていても、日本語学校卒業とともに学生ビザが切れると帰国しなければいけなくなってしまう。ならば店を始めて働いてもらい、就労ビザを取得してもらおうと思ったんです」
大使館がメイドカフェを〈料理店〉と告知した理由は「交流もないのでよくわからない」(大森氏)という。
時期が時期だけに、「美しすぎるロシア人コスプレイヤー」としても話題の店長「ナスチャん」に「北方領土問題についてどう思うか」と聞いてみた。すると、「それはなんの言葉?」とポカンとした顔を返すのみ。
「ロシアってとにかく広いからモスクワあたりの人は北方領土の存在すら知らないみたいです」(大森氏)
法政大学教授でロシア情勢に詳しい下斗米伸夫氏はこう話す。
「プーチンは『(平和条約締結について)期限を明確にするのは有害だ』と話しましたが、これは過去の会談で期限を設けてまとまらなかった経緯があるからです。実際には最終解決への意欲がある。このメイド喫茶には驚きましたけどね。もちろん北方領土問題とは関係がないでしょうが、一般市民レベルでも両国の距離が縮まっていることの証でしょう」
戦後70年かけて縮まってきた両国の距離。その成果は、12月に形になるのか。
※週刊ポスト2016年11月18日号