国内

トランプ大統領は日本経済に不利、憲法改正の動き強まる観測

日本経済に不利で憲法改正に影響も?(写真/アフロ)

 大統領選に勝利し、アメリカの新リーダーとなったドナルド・トランプ氏(70才)。今後、私たちに最も大きな影響を与える可能性があるのは安全保障面だろう。

 選挙中、トランプ氏は何度も「日米安保条約は不公平だ」と繰り返し、日本が安保条約に「ただ乗り」していると強調して、在日米軍の駐留経費を全額負担しないと「米軍撤退」もあると訴えた。日本から米軍が撤退すれば、中国や北朝鮮などの脅威にこれまで以上にさらされることへの不安の声も上がっている。

 元外務相主任分析官で作家の佐藤優さんは、現在沖縄で進行中の基地移転は中止になる可能性があると指摘する。

「米軍普天間飛行場の辺野古移設や米軍ヘリパッド建設は地元住民の反対運動が強く、流血事件まで起きています。現実主義のトランプ氏なら、『米軍兵士の居心地が悪い基地なら必要ない』とスパッと中止するかもしれません」

 産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久さんは、全面的な撤退は現実的ではないと言う。

「トランプ氏は日米同盟堅持を公言しており、米軍全面撤退はありえない。実は日本は『思いやり予算』など、在日米軍の駐留費を年間5000億円以上負担しており、トランプ氏にその事実を説明する必要がある。

 一方で、日米同盟はいざという時に米国が一方的に日本を守るが、日本には同様の義務がない、世界でもめずらしい片務的な同盟です。

 今後は米国民の不満の高まりとともに、同盟国として公平な軍事的負担を担うため、足かせとなっている憲法9条を改正する動きがトランプ旋風を機に国内でさらに強まるかもしれません」

 佐藤さんが指摘する意外な恩恵は北方領土問題だ。

「この問題のネックの一つは、日本の施政が及ぶ領域では米軍が活動できることです。ロシアは米軍の動きを警戒しているので、今後トランプ氏が日本固有の問題として領土問題への干渉をやめ、北方領土が米軍の活動地域外となれば、日露間で返還交渉が一気に進む期待があります」

 経済面では、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の問題が深刻だ。日本は与党が今国会での関連法案成立を目指しているが、トランプ氏は「大統領の就任初日に離脱する」と断言してきた。外国の輸入攻勢から米国産業を守ることが目的だ。

 安倍首相はそれでもTPPに前向きな姿勢を崩していないが、早稲田大学大学院教授の浦田秀次郎さんは「米国脱退でTPPは崩壊する」と言う。

「TPPは米国が離脱すれば、発効できない仕組みです。TPPが消滅すれば、アベノミクスが思い描く成長戦略は実現が難しくなる。本来なら外国産の食料品や製品が安くなって消費者が潤うはずでしたが、TPPの崩壊で消費が伸びなくなり、日本の景気に悪影響が出るはずです」

 トランプ氏が掲げる“内向き”の経済政策により、一層円高に向かう可能性がある。

「輸出産業への依存が大きい日本経済にはマイナス。輸出品が売れなくなりやがて雇用や給料にも影響が出るでしょう」(浦田さん)

※女性セブン2016年12月1日号

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