違法ではないが、誰が考えても罪深い行為で金儲けをする人たちがいる。その場合、世間知らずの少年や少女が食い物にされることも多い。SNSがきっかけでモデルにスカウトされたのち心身ともに利用されかかった女性の体験から、悪質スカウトを繰り返す芸能事務所が展開する新ビジネスについて、ライターの森鷹久氏がリポートする。
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「若い女性」を食い物にした犯罪が無くならない。その手口は巧妙化を重ね、多岐化されたシステムが増し続けていく中で、むしろ被害者の数は増え続けているのではないかと、取材を続けていて確信している。
筆者の取材に答えてくれたのは、一年前にスカウトを機に上京した北関東某市出身のリナ(21)。地元のギャル系アパレルでアルバイトをしていた当時、働いていたショップで扱うアイテムを着用し、その写真をツイッターなどのSNSアカウントに投稿していた。客からの評判も上々で、多い時でフォロワーは500人以上。そんな折に、芸能事務所を名乗るアカウントから届いたのが「スカウトメール」だった。
「ある日突然、ツイッター上で芸能事務所の人からDM(ダイレクトメッセージ)が届いたんです。可愛いですね、うちの会社のオーディション受けてみませんか、って。ツイッターでスカウトなんて怪しいと思って…」
そう思いながらも、念のため芸能事務所アカウントに記載されていたホームページにアクセスすると、そこにはリナ自身がファンでもあった女性モデルXが「所属モデル」として紹介されていた。
「えっ? 本当に? って感じ。Xさんのブログにも、確かにその事務所所属だと記載がある。Xさん以外にも、雑誌モデルやショーモデルも所属してるっぽくて、一気にテンションが上がりました」
よくある「スカウト詐欺」ではない、そう確信したリナは、事務所担当者に言われるがままに、写真と経歴証明書を送付。一週間後には「一次審査合格」の書面を手にしていた。当然、事情を伝えていなかった両親には猛反対されたがなんとか説得。二次審査面接のため、母親同伴で上京したのだった。面接からほどなく、リナの元に暗い声の担当者から電話がかかってきた。
「面接は合格ですが、ある意味で不合格。ある一定レベルになるまではレッスンを受けてもらい、所属してもらう。その場合、宣伝用の写真(宣材)撮影代も実費の負担になってしまう。僕(担当者)としては、ぜひ所属してもらいたい」
ここまでは、古典的ともいえるオーディションの名を借りた集金ビジネスだ。しかし、リナが体験した現実は、さらにそこから進化した、まさに現代の女衒システムともいうべき、事務所が作り上げた悪どいシステムだったのである。