有名企業の事業を見てみると、「本業」からは想像もつかないような意外な組み合わせの「副業」を手掛けているケースがある。家具販売に参入するサントリーもその1社だ。
ウイスキーと家具──。サントリーは一見、関係性のなさそうなものを結びつけている。
「ウイスキーを貯蔵熟成する樽には、樹齢100年以上のホワイトオークなどを使っています。樽の寿命は数十年ですが、そのまま廃棄するのはもったいないと考え、古樽の木材を使った家具を販売するようになりました」(同社広報部)
ブランド名は『樽ものがたり』。1998年に始まったプロジェクトは、ウイスキー愛好者を中心に好評だ。
実は、オークの木で樽に使用される部分は、家具材料として最適かつ貴重な柾目(まさめ=木の中心を縦に切った時の木目)が多く詰まっているという。
製造する家具メーカーの1つ、カリモク家具の常務取締役・神谷清氏はこう話す。
「柾目は、まぐろの刺身でいえば大トロ。これだけ最良な木材を大量に手に入れるのは至難の業です。温度や湿度によって反ったり曲がったりしにくい貴重な部分です」
サントリーの熟成庫倉庫には、およそ100万樽が今も眠っているという。数十年にわたって熟成されたウイスキーの芳酵さやまろやかさを、『樽ものがたり』の椅子に座って、楽しむのもいいかもしれない。
撮影■佐藤敏和
※週刊ポスト2016年12月9日号