お墓に対する思いは時代とともに変わりつつある。「墓じまい」をする人もいれば、お墓を新たに買う人もいる。抱える事情はさまざまだ。最近の墓事情について、ノンフィクションライターの井上理津子さんがリポートする。
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改葬にともない必要になる新たなお墓に限らず、お墓を持っていなかった次男や三男らが必要に迫られ、新しく購入する例も多い。
厚生労働省の衛生行政報告によると、2015年度の墓地数は86万5718。前年度より1353か所増えた。墓石の数の統計はないが、墓地の増加にともない増えていると考えられる。
今、お墓はいくらで買えるのか?
●全国平均:201万5500円
●東日本平均:203万2900円
●西日本平均:197万500円
この数字は、出版社の株式会社鎌倉新書による2015年の『墓所・墓石消費者全国実態調査』によるもの。全国約7300か所の霊園・墓地・墓石を紹介する同社のサイト「いいお墓」を通じた従来型のお墓購入者が支払った平均額(永代使用料と墓石価格の合計)だ。区画面積は「2平方メートル未満」が77%と圧倒的に多く、そのうち「1平方メートル~2平方メートル」が42%、「1平方メートル」未満が35%である。
鎌倉新書が第三者機関として電話相談を受ける「『いいお墓』お客様センター」アドバイザーの田中哲平さんによると、問い合わせ相談のベスト3は、
●◯◯のエリア内で買えるか
●100万円の予算で買えるか
●樹木葬ができるところがあるか
「お墓は300万円ほどするというイメージを持っていて、しかし自分は100万円くらいで買いたいと漠然と思っているかたが多いようです」(田中さん)
亡くなった人がすでにいてお墓を探す場合は“お参りに行く側の目線”でアクセスを重視し、自分が入るお墓を生前に探す場合は“お墓の場所に自分がいる目線”で海が見える場所など景観重視で選ぶともいう。
購入価格平均201万5500円に対し、予算100万円とその差は大きいが――実際に100万円でもお墓が買えるのだろうか。
「品川区や港区など都心の一等地でなければ、大丈夫です」
と田中さんは言う。試しに「私の居住地・杉並区から30分以内の場所では?」と聞いてみると、従来型のお墓なら4か所、納骨堂(屋内の遺骨収蔵庫)や永代供養墓(合葬式、個別式、集合式など)、樹木葬なら20か所以上あるという。それら墓石を建てない形式のお墓の購入数は、現状では全体の3割以下だが、近年の伸び率が非常に高いそうだ。
※女性セブン2016年12月15日号