高血圧と診断され、医師の勧めるままなんとなく降圧剤を飲み続けている人が多いといわれる。このまま飲み続けていいものなのか疑問を抱いている人も少なくない。
そこで、本誌は降圧剤の服用経験者である60歳以上の男女100人に緊急アンケートを実施した。その結果、「降圧剤をやめようと思ったことがある」と回答した人は51%。その中で「実際にやめられた」という人は45%という結果となった。「やめられた人」の共通点は何だったのだろう。
食生活の見直しや運動などで高血圧患者が降圧剤を使わずに済むようになった事例は多い。管理栄養士による食事の見直しや運動指導などを高血圧治療に取り入れている坂東ハートクリニックでは、過去3年間、毎年100人以上が降圧剤をやめている。院長の坂東正章医師の話。
「主治医が患者の全身の状態を見定めながら、降圧剤の減量や中止を慎重に検討します。動脈瘤や心肥大、慢性腎臓病など高血圧に伴う合併症を生じている人は降圧剤中止が困難なケースが多いが、食事と運動の調整で降圧剤の量を減らせるケースは多い」
やめることで得られるメリットは大きい。8年間服用を続けてきた74歳男性・Aさんが語る。
「医師の指導のもとで降圧剤をやめました。すると、毎朝1錠飲む煩わしさだけじゃなく、飲み忘れたときの『出先で血圧が急上昇して、倒れたりしたらどうしよう』といった不安感からも解放された。年間約7万円かかっていた降圧剤代が浮いたのも大きい。降圧剤をやめて、精神的にも経済的にも随分楽になりました」
前出・坂東氏が続ける。
「薬そのものの費用だけでなく、病院の処方箋料、薬局の薬剤処方料なども含むので、降圧剤を処方されている患者にとっては結構な負担額になります。こうした医療費や通院や診察の時間を自分の趣味や好きなことに使える。こうしたメリットを知ってもらうことが、高血圧患者の生活改善のやる気にも繋がっています」
※週刊ポスト2016年12月16日号