安倍政権にとって、いまや外遊は、支持率を高める大きな推進力である。米新大統領に決まったトランプ氏と世界に先駆けて会談を行ったことで、更なる存在感を見せつけている。ジャーナリスト・山口敬之氏がその舞台裏を詳らかにする。
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第二次政権の安倍晋三首相の側近達が異口同音に証言するのは、「総理は外遊に行くと元気になる」という事だ。
本来一国のリーダーにとって外遊は、事前準備に時間をとられ、時差と闘い、本番の首脳会談や国際会議では国益をかけた大一番に臨むものであり、心身ともに消耗する大仕事である。
第一次政権の安倍はまさにこれで、内政で躓いた状態のまま外遊に出かけ、疲れ切って帰国することがほとんどだった。
特に辞任直前に訪れたインド外遊では、潰瘍性大腸炎の再発に怯えていたにもかかわらず外交上のマナーを優先して供されたインド料理を無理に飲み込み、これが辞任の直接的な原因となった。
ところが、昨今の安倍は外遊をエネルギー供給源としている。2012年12月から4年弱にわたって首相の座にいる安倍は、国際政治の舞台では古株の部類に入る。イギリスのキャメロン首相は去り、アメリカのオバマ大統領の勇退もカウントダウン状態だ。国際会議では、連続在任期間が長い順番に高位の席につく。これは物理的な意味に限らず、会議の進行においても同じだ。