早速取り入れてみた私は、やはり少しみんなと違う男役に入団5年目くらいになっていた。そして次に研究したのが外国人男性(この研究は結果退団する日まで続いたっけ)。しかしこの外国人男性研究は、洋画の俳優というより実物の男性に注視した。

 手振り身振りが大きく、エンターテインメントというものをDNAに思いっきり注入されたイギリス紳士。遊び心あるアメリカ人のフランクで無防備な色気。そう、ラスベガスのマジシャンなんかにも憧れた。みんなが日舞や声楽の個人レッスンを習いに行く中、私一人、大阪の手品教室に通っていたほど。

 今でも白い鳩を見る度に、鳩の糞のついた新聞紙を甲斐甲斐しく替えていた師匠の汗が滴る夏を思い出す。そしてハマった!と言えば、外国人の男性ダンサーが踊りまくるバー。公演終わりに足繁く通った日々…日々、日々。(※ちなみに勉強です。勉強です。)

 そこで習得したのが、わかりやすいところでウインク! あと、帽子のつばを美しく這わせる指の走らせ方。いわゆる所作。外国人の仕草は本当に魅力的だ。きっと幼い頃からおじいちゃんは酔えば踊り、ラジオからは普通にジャズが流れ、テレビをつければカウボーイがピストルクルクル回していたであろうことが手に取るようにわかるから凄い。とにかく、感性が余裕で洒落てる。

 片方の眉だけをひょいとあげる感情表現はこの世の愛の言葉を一手に掴んだ最強のアイテムに見えた。はぁー、思い出すだけでも愉しい。これは当時の私がいちばん心奪われた仕草でした。(後日に続きます)

撮影■渡辺達生

※女性セブン2017年1月1日号

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