国際情報

ドゥテルテ氏 市長時代の実績は年末花火・夜間カラオケ禁止

ダバオ市長時代のドゥルテ氏。イスラエル製短機関銃を携行

 米国に挑戦状を叩きつけ、中国への接近を仄めかしたかと思えば、周囲が火消しに奔走。国内では麻薬撲滅を強行し、国民から喝采を受ける。フィリピンの盟主がここまで注目を浴びたことはあっただろうか。ノンフィクションライターの水谷竹秀氏が、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(71)、その原点の地を歩く。

 * * *
 ドゥテルテ大統領が22年間市長を務めたダバオ市は、マニラ、セブに次いでフィリピン第3の都市と呼ばれる。中心部を歩けばすぐに分かるが、マニラとは異なり、ゴミがほとんど落ちていない。かつ、喫煙者をまず見かけない。吸い殻のポイ捨てなど言語道断である。市条例で禁煙が徹底されているため、コンビニでたばこを買うことすらできない。飲食店やホテルなど公共の場所は原則、禁煙だ。

 フィリピンでは年の瀬が迫ると、爆竹の炸裂音が街中に轟くのが恒例だ。しかし、毎年のように子どもを含む負傷者が千人近くに上り、深刻な社会問題となってきた。そんな中でダバオ市は、2002年に市条例で年末花火が禁止された。市職員のフィリピン人女性(37)が当時の状況をこう説明する。

「子どもの頃から慣れ親しんだ文化的行事だから、ダバオ市民も最初はこれに反発した。でも実際に禁止されて負傷者が1人も出なくなったことで、恩恵の方が大きいと分かりました」

 爆竹と並び、フィリピン庶民に親しまれているのがカラオケだ。酔っ払って未明まで歌い続ける住民もいるため、相当な近所迷惑になる。ところがダバオ市では夜間は禁止されているため、「騒音」に悩まされることもない。これらはすべて、ドゥテルテ氏が市長時代に築いた実績である。

 もちろん良いことずくめではない。市の中心部は渋滞が深刻化し、物乞いや立ちん坊の姿も見られ、9月上旬には15人が死亡する爆弾テロも起きた。

 それでもマニラなど他の主要都市に比べれば、相対的に安心、安全な街と呼べるだろう。だが、ドゥテルテ氏が1988年に市長に就任するまでのダバオ市は、「犯罪都市」だった。

【PROFILE】水谷竹秀●1975年三重県桑名市生まれ。上智大学外国語学部卒業。現在フィリピンを拠点にノンフィクションライターとして活動中。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健賞受賞。近著に『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』。

※SAPIO2017年1月号

関連キーワード

トピックス

高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
有村架純と川口春奈
有村架純、目黒蓮主演の次期月9のヒロインに内定 『silent』で目黒の恋人役を好演した川口春奈と「同世代のライバル」対決か
女性セブン
芝田山親方
芝田山親方の“左遷”で「スイーツ親方の店」も閉店 国技館の売店を見れば「その時の相撲協会の権力構造がわかる」の声
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
小泉氏は石破氏に決起を促した
《恐れられる“純ちゃん”の政局勘》小泉純一郎氏、山崎拓氏ら自民重鎮OBの会合に石破茂氏が呼ばれた本当の理由
週刊ポスト
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン