ライフ

鎌倉幕府も日露戦争も、「仇討ち」で動いてきた日本の歴史

仇討ちが時代を変える原動力だった(写真:アフロ)

 仇討ちは個人的な復讐にとどまらない。歴史を動かした重大事件も、元を質せば仇討ちと言えるものが少なくないからだ。仇討ちは日本の歴史を動かす原動力だった。作家・歴史家の加来耕三氏が解説する。

 * * *
 日本人にとって仇討ちは真に縁の深い現象だといえる。元禄赤穂事件(忠臣蔵)を持ち出すまでもなく、仇討ちを題材にした小説や映画、テレビドラマが国民の支持を得たのは、日本人の琴線に触れるものがあったからだ。昔も今も、日本人が大切にしていることそれは、「自分が大事にしているものに対する面子」であろう。

 鎌倉時代以降の武家社会において、武士の面子といえば、「人から笑われないこと」だった。自分の主君や父親が討たれたのに、何もしないでいることは、面子丸つぶれで嘲笑のネタになる。周囲の人間から軽んじられれば、武士としての処遇にも影響する。人から笑われることは、武士にとっては死活問題だったのだ。

 日本人の多くは、仇討ちは主君や親に対する忠義によった行動だ、と思うかもしれない。しかし、それは誤解だ。例えば赤穂浪士のうち、重臣は大石内蔵助以下2~3人だけであり、三分の二の人々は、主君・浅野内匠頭に会ったことさえない下級武士だった。

 平安後期に武家が台頭して以降、武士の根底にあったのは面子を維持しながら、伸し上がっていく己れの欲である。平将門に父・平国香を殺され、何度も戦った末に、執念で打倒した平貞盛(生没年不詳)の仇討ちは、子孫の平清盛による平家政権を生み出すきっかけとなった。

 平治の乱で敗北した父・義朝の無念を晴らして、平家を滅亡させた源頼朝(1147~1199)は、鎌倉に幕府を開設し、史上初の武家政権を樹立した。本能寺の変で主君・織田信長を葬った明智光秀を、山崎の戦いで討って、天下を統一した羽柴秀吉(1537~1598)も、いわば仇討ちを遂げたと言える。

 父親や主君に対する忠心がないとは言わないが、あくまで根底にあるのは、自らの上昇志向である。その結果としての「仇討ち」が、いつの世も歴史を動かしているのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
有村架純と川口春奈
有村架純、目黒蓮主演の次期月9のヒロインに内定 『silent』で目黒の恋人役を好演した川口春奈と「同世代のライバル」対決か
女性セブン
芝田山親方
芝田山親方の“左遷”で「スイーツ親方の店」も閉店 国技館の売店を見れば「その時の相撲協会の権力構造がわかる」の声
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
小泉氏は石破氏に決起を促した
《恐れられる“純ちゃん”の政局勘》小泉純一郎氏、山崎拓氏ら自民重鎮OBの会合に石破茂氏が呼ばれた本当の理由
週刊ポスト
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン