国際情報

ダライ・ラマ「トランプ氏に会いたいと思っている」

ダライ・ラマ14世

 チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世は激動の世を生きる世界の人々にこう語りかける。「人類には大きな希望がある」と。

 * * *
 私は21世紀を生きる人々、とくに若い世代には今世紀を「平和の時代」にする責任があると思っている。20世紀が幸福な時代だったならば、同じようなやり方を続ければよいのだが、実際は違う。前世紀は「戦争と流血の時代」であり、結果的に2000万人もの人類が死んでいった。残念ながら、20世紀を一言で表現すると「勝つか負けるかの時代」ということになる。

 しかし、物事は一つの方向から見るだけでなく、複眼的に見ることが必要だ。19世紀から20世紀前半にかけて人類は戦争を繰り返したが、20世紀後半には良いこともたくさんあった。さらに、21世紀に入って、前世紀と異なる進歩や改善点も出始めているはずだ。

 例えば、ソ連邦の崩壊という歴史的事件は武力によるものではなく、民意によって起きた変化だ。中国はいまだに閉鎖された社会であり、検閲や情報封鎖は道徳的に正しくはない。13億の中国人には事実や世界の現実を知る権利があるのだ。我々の未来はもっと自由で、表現や思想、報道の自由がさらに確保されるべきだ。未来にとって唯一有効な方法は民主主義であると思う。

 最近、アメリカで行われた選挙は非常に複雑なものだった。この選挙自体が「民主主義とは何か」「言論の自由とは何か」「思想の自由とは何か」ということを物語っていた。アメリカの指導者は交代し、考え方に変化もあるが、彼らは自由主義を貫いている。私はアメリカを自由・民主主義、法治主義の指導的国家であると考え、トランプ次期大統領にも書簡でそう伝えた。私はこれまで数人の米大統領や議会指導者とワシントンで会ったように、トランプ氏にも会いたいと思っている。

 とにかく、世界のあらゆる国はそれぞれの国民の所有物にほかならない。それぞれの国民は常に存在し続けているが、その一方で、政府は時代に応じて変化し、指導者は交代していくものだと思う。

●インタビュアー/相馬勝(ジャーナリスト)

※SAPIO2017年2月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

勝負強さは健在のDeNA筒香嘉智(時事通信フォト)
DeNA筒香嘉智、日本復帰で即大活躍のウラにチームメイトの“粋な計らい” 主砲・牧秀悟が音頭を取った「チャラい歓迎」
週刊ポスト
『虎に翼』の公式Xより
ドラマ通が選ぶ「最高の弁護士ドラマ」ランキング 圧倒的1位は『リーガル・ハイ』、キャラクターの濃さも話の密度も圧倒的
女性セブン
羽生結弦のライバルであるチェンが衝撃論文
《羽生結弦の永遠のライバル》ネイサン・チェンが衝撃の卒業論文 題材は羽生と同じくフィギュアスケートでも視点は正反対
女性セブン
“くわまん”こと桑野信義さん
《大腸がん闘病の桑野信義》「なんでケツの穴を他人に診せなきゃいけないんだ!」戻れぬ3年前の後悔「もっと生きたい」
NEWSポストセブン
中村佳敬容疑者が寵愛していた元社員の秋元宙美(左)、佐武敬子(中央)。同じく社員の鍵井チエ(右)
100億円集金の裏で超エリート保険マンを「神」と崇めた女性幹部2人は「タワマンあてがわれた愛人」警視庁が無登録営業で逮捕 有名企業会長も落ちた「胸を露出し体をすり寄せ……」“夜の営業”手法
NEWSポストセブン
中森明菜
中森明菜、6年半の沈黙を破るファンイベントは「1公演7万8430円」 会場として有力視されるジャズクラブは近藤真彦と因縁
女性セブン
昨年9月にはマスクを外した素顔を公開
【恩讐を越えて…】KEIKO、裏切りを重ねた元夫・小室哲哉にラジオで突然の“ラブコール” globe再始動に膨らむ期待
女性セブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
報道陣の問いかけには無言を貫いた水原被告(時事通信フォト)
《2021年に悪事が集中》水原一平「大谷翔平が大幅昇給したタイミングで“闇堕ち”」の新疑惑 エンゼルス入団当初から狙っていた「相棒のドル箱口座」
NEWSポストセブン
17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン