「トヨタは過去にも5年間で1兆円を超える米国投資はしてきたので、改めて驚くほどの発表ではないが、北米自動車ショーに合わせて日系メーカーに揺さぶりをかけるトランプ氏に素早くメッセージを送ったという意味では、絶好のタイミングと内容だった」(前出の自動車業界紙記者)
その一方で、ジャーナリストの福田俊之氏はこんな不安を口にする。
「ビジネス経験が豊富で、時に無謀な交渉も厭わないトランプ氏だけに、『1兆円出せるなら、さらに1兆円出せ』『13万人の雇用を20万人に引き上げろ』などと言い出しかねません。また、トヨタが示した具体的な数字が独り歩きして、それがメキシコに進出する日本企業の基準になってしまったら大変です。
トランプ氏のいうFTAからの離脱や関税の引き上げは一朝一夕に実現できる政策ではありません。ならば、日産のゴーン氏のように、ひとまずトランプ流に従う姿勢を見せながらも、自社の米国戦略を臨機応変に見直す構えでいたほうが賢いやり方なのかもしれません」
トランプ砲に一喜一憂していては術中にはまるだけだ。それこそ過剰に反応してアメリカ国民の感情まで逆なですれば、日米貿易摩擦を彷彿させる日本車バッシングが起きないとも限らない。