カルロス・ゴーン一覧

【カルロス・ゴーン】に関するニュースを集めたページです。

逃亡する際は、どんな心境なのだろうか(写真はカルロス・ゴーン氏。時事通信フォト)
自転車旅行で1か月捕まらなかった逃亡犯 スマホ待たず、デジタル捜査の裏をかく結果に
 孤独な女性刑務官と、懲役75年の判決を受けて服役中だった男の逃避行は、11日目に終わりを迎えた。若き凶悪犯ケイシー・ホワイト受刑者(38才)と、彼に恋をした看守のビッキー・ホワイト刑務官(56才)。ふたりは4月29日、米アラバマ州の刑務所からパトカーで堂々と脱獄した。トラックに乗り換えると、州外に走った。北に向かって、テネシー州、ケンタッキー州を越えて350kmを走ったが、ついにインディアナ州で警察に発見された。 ロマンスの結末を悟った看守のビッキーは、捜査車両とのカーチェイスの最中に、拳銃で自分の頭を撃って、絶命。車を降りて、両手を上げたケイシーは「私の妻を助けてくれ!」と叫んで逮捕されたという。勤続20年の真面目なビッキーは、わずか2週間にも満たない“新婚旅行”のために、残りの人生を失った。脱走の“魔力”にとりつかれた男女の、ドラマのような現実の話である。「日本では基本的に、刑務所には男性刑務官、女子刑務所には女性の刑務官が配置される。受刑者と刑務官の間で恋愛問題が起きたというトラブルは聞いたことがありません」 そう語るのは、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)を上梓したばかりのフリーライター、高橋ユキさんだ。同書には、近年、新聞やテレビで騒がれ、私たちの記憶に新しい逃亡犯たちが何人も登場する。 2018年に大阪府富田林署の面会室のアクリル板をずらして逃げ出し、自転車旅のサイクリストを偽装して1か月以上も捕まらなかった山本輝行受刑者(当時30才・仮名)や、同年、愛媛県今治市の塀のない松山刑務所(大井造船作業場)から脱走して島に潜伏、さらには瀬戸内海の尾道水道を泳いで渡った野宮信一受刑者(当時27才・仮名)などだ。「逃亡犯に取材をする中でいちばん印象が強かったのは、富田林署から逃げた山本です。彼は口がうまくて、ある意味では自分を客観視できる。相手が望んでいる『自分の姿』を察知して、演じることができるというのでしょうか。その“能力”が彼に長期の逃亡を可能にさせたのだと感じました」(高橋さん)逃亡を可能にしたいくつもの偶然 山本は、警察署から脱出して48日間にわたって逃げることができた理由を次のように説明している。《壁を作らずに地元の人と積極的に話し、スマホに頼らないこと。スマホを眺めていれば、会話の機会を逃し、旅先の風景も見逃してしまう》(『逃げるが勝ち』より、以下《》内は引用) たしかにその動きは、奇妙なほど“フレンドリー”だった。警察署を脱出した後、盗んだ自転車をこいで四国に向かった山本は、日本縦断中のツーリストを装い、愛媛県庁の自転車新文化推進課に自ら足を運んだ。もちろん、顔は隠していない。「山本は“日本一周をしているようなプレートを作れないか”“サイクルマップはないか”と相談したそうです。快く応じた県職員は、彼に『日本一周中』と印刷されたプレートと、サイクリング用の地図を提供しました」(全国紙社会部記者)こうして山本は日本一周を目指す旅人に変身し、各地の道の駅で地元住民たちと交流するようになった。「逃走中とは思えないほど積極的に人とかかわっていた。ボランティアで草むしりを行い、真っ黒に日焼けをしていたこともありました」(前出・全国紙社会部記者) 高橋さんは、彼らが潜伏した土地に足を運んだという。「とある道の駅の職員さんに聞いたのですが、山本は店に入ると、程なく店員さんに雑談を仕掛け、油断した隙を突いて、たこ飯やパン、コーヒーを盗んでいたといいます。彼の積極的にコミュニケーションを取る姿勢は、万引にも生かされていました」(高橋さん・以下同) 山本は富田林署に勾留中だったため、スマホを没収されていた。だが、その素寒貧は、逃げるためには有利に働いたようだ。 高橋さんによれば、近年の警察は、特にデジタルフォレンジック(電磁的記録を使った捜査や証拠集め)に力を入れており、個人情報が集約されたスマホを持ったまま、多くの監視カメラが設置された公共交通機関で逃げ続けることは困難だという。反対に、スマホを持たず、盗んだ自転車で移動した山本は、その“アナログぶり”によって、最新の捜査手法の裏をかく存在になっていた。「彼の場合、スマホがなかったのは勾留中だったからですが、気づかずに彼を“助けた”人が多いことは事実です。スマホに頼りすぎず、目の前の人と向き合って会話をするというのは、古典的なようですが、最も手っ取り早く“信用”を得る手段なのかもしれません」 ちなみに日本における「逃亡犯」には大きく2つの種類があるという。1つは、勾留中の者や受刑者が逃げ出した場合。もう1つは、保釈中の者が行方をくらました場合だ。「前者の場合は、逃げるという行為そのものが罪になり、『単純逃走罪』あるいは『加重逃走罪』で罰せられます。一方で後者の場合は、逃げるという行為そのものは罪になりません」 2019年に日本からレバノンに逃亡した日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告も、保釈中だったため、逃げたことそれ自体の罪には問われていない。※女性セブン2022年6月23日号
2022.06.13 11:00
女性セブン
森永卓郎さんが話題のリアルタイム小説を「ラジオ的」と評した理由
森永卓郎さんが話題のリアルタイム小説を「ラジオ的」と評した理由
“この小説は「ラジオそのもの」じゃないか!”――これは『スマホを落としただけなのに』で大ヒットを飛ばした小説家・志駕晃さんの最新単行本『彼女のスマホがつながらない』に経済アナリストの森永卓郎さん(63才)が寄せたメッセージだ。実は森永さんには志駕さんと共に、ラジオ番組を作っていた過去がある。「志駕さんは作家としてデビューする前にニッポン放送でラジオ番組のディレクターをやっていて、その頃に知り合いました。 だから彼の作品の中では、デビュー第2作目でラジオ業界を舞台にした密室殺人ものの『ちょっと一杯のはずだったのに』がとても印象に残っています。ラジオの現場で働いていた志駕さんの実体験をもとにした細かい仕掛けが盛り込まれているし、謎解きの部分も本格的。マニアにとってはすごく楽しい1冊です。 しかし今作は、そんな“マニアックさ”と対を為す、新しい魅力を持つ作品になっているように感じました。その理由は、女性週刊誌の編集部を舞台にしたことにあると思います」 森永さんが評するように、本作は『令和2年の女性週刊誌編集部』と『平成30年のパパ活に励むお嬢様女子大生たち』という、異なる二つの空間が交差しながら進行していく「リアルタイムミステリー」だ。「この舞台設定によって令和のいま起きているニュースを入れなければならないという“縛り”が生まれ、それがあることでかえって多くの人が楽しめる作りになっている。日々世の中に起きる出来事ならばいまの時代を生きている私たちは皆、それを知っていて、同じ体験を共有しているから、コロナに翻弄される主人公にハラハラしたり、自分を重ね合わせたりすることができます。実際に読んでいて、『あぁ、カルロス・ゴーンさん、逮捕されていたなあ』とか、当時のことを思い出す面白さがありました」 本作はもともと「女性セブン」誌上での2020年の2月~11月までの週刊連載をまとめたもの。パパ活女子大生の周りで殺人事件が起きるというフィクションの背景に、カルロス・ゴーン逮捕や、新元号の発表や新型コロナウイルスの蔓延、安倍元首相辞任に至るまで、現実のニュースが一週間ごとに描かれている。「現実とストーリーをリンクさせ、しかもそれを週刊連載で書くことは、ものすごく大変な作業であることは想像に難くありません。しかも、あとがきを読むと『当初は東京五輪の開催を見据えてプロットを作っていた』とありました。コロナによって見通しがたたなくなり、そのプロットを大幅に変更せざるを得なくなったのはミステリー作家としては大きな痛手だったでしょう。だけど、ラジオディレクターの志駕さんならワケもなかったと思う。なぜなら、この作品って、実は“ラジオそのもの”なんです。 ラジオは大部分が生放送です。一応、台本もありますが、台本通りにできることのほうがレアケース。生放送の最中に大きなニュースが入って来ればその瞬間で、柔軟に進行を変えていかなければならない。志駕さんはディレクター時代、毎日のようにそんな現場にいたから、“現実に飛び込んできたニュースに合わせて内容を変えていく”という小説の作り方は、彼にとっては、最も馴染みの手法なのです」 志駕さんのディレクター的手法とともに森永さんが舌を巻いたのは、生活苦に追われ、友人に誘われるまま「パパ活」に手を染める主人公・咲希を始めとする「パパ活女子」たちの描写だった。「どうしてあんなに若い女の子の心理が鮮明に描けるのか、と不思議な気持ちになりました。私なんか、『パパ活』と聞いても『そんなの、やっちゃダメだろう!』と一喝してそこで話が終わってしまう(笑い)。だけど志駕さんは一歩踏み込んで、彼女たちがなぜそうしなければならなかったのかを考え、描写している。ほぼ同じ世代の男なのにこんなに女性の心理がわかるんだろう、と不思議に思ったのですが、ディレクター時代を振り返ってみると彼は人の心理を読み解く天才だった。 いまでも覚えているのが、フリーアナウンサーの垣花正くん(49才)と一緒に番組をやっていた時のこと。ある日の本番中、垣花くんがスタジオで読者からのハガキを読んでいて、私は志駕さんと2人外にいたんです。すると、志駕さんが突然『よし、カッキー(垣花さん)泣かせるか』ってぼそっとつぶやいた。きょとんとする私をよそに、志駕さんは垣花さんの琴線に触れるBGMを徐々にボリュームを上げながらかけていった。そうしたら垣花くん、本当に涙ぐんでしまったんです。 本作の魅力は、登場人物たちの“心理”にもあると思います。最初は週刊誌の仕事は向いていないと愚痴っていた友映が、どう仕事に向き合うようになっていくのか。咲希たちがどんな心理でパパ活にハマっていくのか。次々に現れる怪しい登場人物たちは、何を考えているのか…・。最後まで読み通したあと、読者であるあなたの心もきっと大きく動かされているはずです」 ◇森永卓郎(もりなが・たくろう)1957年7月12日生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。現在『情報ライブミヤネ屋』(日本テレビ系)ほか、多数のメディアで活躍中。
2021.02.16 16:00
NEWSポストセブン
日産との裁判が始まったゴーン氏、今後はどう動く?(EPA=時事)
日産との100億円訴訟にゴーン元会長が頼った元特捜検事
 特別背任容疑で東京地検特捜部に逮捕されたはずのカルロス・ゴーン日産元会長。保釈中の2019年末にレバノンに逃亡し、年明けすぐに世界に向けて「不当逮捕」だと訴えた。東京地裁ではゴーン氏不在の元、共に逮捕されたグレッグ・ケリー元代表取締役の裁判だけが続いているが、日産のお膝元である横浜地裁では、日産とゴーン氏が真っ向からぶつかり合う裁判が始まっている。「日産は会社に損害を与えたとして100億円の賠償をゴーン氏に求めている。対するゴーン氏は元特捜検事の郷原信郎氏らを弁護士として訴えの棄却を求め、徹底抗戦する方針です」(司法記者) 郷原氏はゴーン氏の保釈中に交流を重ね、『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館刊)という著書も出すなど、ゴーン氏に寄り添ってきた。郷原氏が語る。「刑事裁判が開けない今、この民事訴訟が唯一、ゴーン氏が関わる裁判であり、事件の真相解明の場になるでしょう」 最近のゴーン氏の様子は?「11月末にZoomで会議をしましたが、国連人権理事会でゴーン氏の逮捕、勾留について、『根本的に不当だ』という意見書が出た直後だったので、『いかに日本の検察の逮捕はひどいものかということを、国連が認めてくれた』と、随分と喜んでいました」(同前) 12月14日付のフランス紙・リベラシオンの報道によれば、ゴーン氏夫妻の資産計1300万ユーロ(約16億4000万円)相当を仏税務当局が追徴課税を視野に押収したという。仏当局は夫妻が居住地をオランダに移していたことに対し、「課税逃れのための虚偽申告だった」と判断しているようである。激動の1年だが、この人は何も変わっていないようだ。※週刊ポスト2021年1月1・8日号
2020.12.26 07:00
週刊ポスト
元特捜検事と元新聞記者が明かす「検察とメディアの癒着」
元特捜検事と元新聞記者が明かす「検察とメディアの癒着」
 東京高検の黒川弘務・前検事長の賭け麻雀問題を受けて有識者会議「法務・検察行政刷新会議」が開かれるなど、検察が抜本的改革を迫られている。中でも世間を驚かせたのが、検察とメディアの驚くべき癒着である。なぜ、こんな歪な関係が生まれたのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏と、官僚とメディアの関係性を問題提起してきたジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京新聞論説副主幹)が、一連の問題を語り合った。 * * *郷原:国民からの批判を受けた検察庁法改正の断念、賭け麻雀疑惑による黒川弘務・東京高検検事長の辞任を経て、林真琴氏の検事総長就任が決まりました。一連の件を踏まえて、検察とメディアのあり方をこの機会に見直そうと思っています。もともと長谷川さんと私は、安倍政権をめぐる論調は違うが、この点については、議論ができると思いました。長谷川:メディアの側で言うと、大学を卒業して新聞社やテレビ局に入って最初に叩き込まれるのは「お前の調べはどうでもいい。お前自身は事件、事故を取材する『少年探偵団』ではない。警察、検察が何を調べているのかを聞いてくるのが、お前の仕事」ということなんです。これを誤解してマスコミに入ってくる者もいて、たとえば、現場の聞き込みで「そこに白いクルマが止まっていた」とか聞いてくると、それをそのまま記事に書こうとする。そこでデスクが「誰に聞いたんだ」と聞いて「私が聞いてきた」と答えたら「それではダメだ」ということなんです。 最初のサツ回りでそれを徹底的に仕込まれるので、東京に上がって霞が関や検察、警察を取材するときにも、彼らの話を聞いてくることが仕事になる。相手の言っていることが正しいか、間違っているかは、つまるところ、どうでもいいんです。間違っていても、それは自分ではなく相手の問題だと。真実を伝えるというのは、あくまで建前にすぎず、真実は役所なり警察検察が調べることだというのが、メディアの大前提になっている。少なくとも、日本のマスコミはそうです。だから自然と官僚のポチになる。これは記者の構造そのものなんです。郷原:それがはっきりした形でマスコミと検察との形で出たのが、司法クラブであり、今回の黒川氏と記者たちとの賭け麻雀ですね。長谷川:記者からすれば、検察官と麻雀なんてできたら、最高なんです。何時間、一緒にいられることか。「俺もついにここまで来たか」という充実感で一杯のはずなんですよ。相手の懐に入って、本音でいろんな話ができ、雑談ができる。おそらく、あの週刊文春の記事を読んで一番びっくりしたのはライバル他社でしょう。デスクに、「あれだけ、食い込まれてたのをお前は知らなかったのか」と言われた記者もいるんじゃないかな。 郷原:私は特捜部の検事だった頃、そういう記者たちの姿を見て、もの凄い違和感を覚えました。特捜部の検事になった途端に、記者の夜回り(取材)が来る。夜も来るし、朝も駅までついてくる記者がいる。帰ってきたら、雨がひどく降っているのに、物陰から出てくる。なぜここまでやるのかと。長谷川:むしろ、雨が降る日や雪が降る日は狙い目なんです。俺はここまでやっている、という相手に対する演出になるから。郷原:それで、私もたまに何を聞きたいかと話すんだけど、彼らは自分の考えが全然ない。「捜査でいつ何があるんですか」それだけ。彼らの生態というのはそうなんだと強く感じてきた中で、私が付き合ってきた中にも、ごく僅かですが、問題意識を持つセンスのある記者もいました。特捜部は事実関係よりも特定のストーリーに合う調書を取るかどうかの問題で、事実の解明なんて何にも考えていないのではないか、と疑問を抱く記者ですね。しかしそういう記者は司法記者クラブからは外れていき、検察と同じ価値観に浸っちゃう記者だけが残る。 私はそうした司法とメディアの癒着があることが、特捜部が暴走する原因だと思っていました。どこかで正していかねばならないと思っていた。日産のカルロス・ゴーン元会長については、新聞が特捜部の描く「強欲な独裁者」像に沿った報道をしていたことを『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館刊)で指摘しました。長谷川:そういう問題意識を持っているのは、検察の世界では、郷原さんぐらいしかいないんじゃないですか。郷原:私はもともと検察官になりたいと思っていたのではなく、たまたま入り込んでしまったから。長谷川:大方の検察官はそんなことを思っていないでしょう。さらにすごいのが財務省ですね。財務省は新聞記者が財政について意見するなんてとんでもないし、できるわけがないと思っている。それをするのは俺たちの仕事だと。省議や局内で決めたことがすべてで、そこで決めたことを通知する相手が記者です。財務省には、幹部が記者や評論家など部外者に説明するための「標準的な説明の流れ」という30枚から40枚くらいの文書があって、どの記者がどんな議論を吹っかけても、相手はそこに書いてあることしか答えない。財務省はそこまで意思が統一されています。 郷原:特捜部の捜査というのは、ボート型フォーメーションなんです。ボート競技のボートです。(最後尾で舵を取りながら漕ぎ手に指示を出す)コックスがいて掛け声をかけ、そのコックスの掛け声で必死に漕いでるだけで、どっちに向かって進んでいるのかすら分からない。上から言われた通りのストーリー通りに調書を取る、それが特捜部の所属検事なんです。そういう軍隊組織の形は、メディアとも似てますよね。メディアも上に言われたものを取ってくるだけで、上に言われたことを考えずにやるということは検察と同じ。捜査も取材も、個人が創意工夫して頭を使うから真実に迫れるし、いろんなことが明らかになる。それなのに特捜部は、先にストーリーを上の人間が決めてしまうので、新たな発見はない。長谷川:新聞記者の場合は、支局に入社したときからデスクに徹底的に、さっき話したような取材のイロハを叩き込まれる。そのうち、俺は考えちゃいけないんだ、と思うようになる。検察も同じなんですね。郷原:そうしたビヘイビア(振る舞い)が、身について来るんですね。検事の場合、任官してしばらくは、小さな事件でも自分でやるので、自分で考えて、自分で決める。ところが、特捜部のような大きな事件をやるときは違う。そこには個人の考えというのはほとんど関係ない。そこに違和感を覚える人間はいるんですが、その価値観を受け入れることができる人間が長く特捜部にいて主任、副部長、部長に出世していく。長谷川:私もそういう中で、やってきました。でも、新聞の場合は論説委員室というのがあって、論説委員がいる。これはちょっと違って、一応、社内では自分の意見を述べるという建前になっている。まあ、本当はそうはなっていないんだけれど、自分の考えであるらしきものを会議でプレゼンして、それが採用されれば、それを社の意見として社説に書く。私はたまたま46歳で論説委員になってしまって、そういう仕事をやり始めたわけですけれど、当時は、実は財務省お気に入りの記者で、財政審の委員になっていたりしたんで、さっき言った「対外説明」の紙ももらっていたんです。これさえ持っていれば財務省に取材する必要なんてない、全部書いてあるから。自分で言うのもなんですけど、私は「スーパー特A級のポチ記者」でした。  ところが、ある時、後に財務次官になる幹部と議論したんです。そこで「財政再建のためにも、政府のサイズをもっと小さくしたらいいんじゃないか」と言ったら、彼はその「対外的説明の流れ」に沿ってお話しをされた。それを聞いて「ああ、この人は私と全く議論する気がないんだな」と分かりました。私はまがりなりにも論説委員だし、財政制度等審議会の委員だったんですけど、そんなのはまったく関係ない、というか、ポチにすぎない。その経験があって、これが私の永遠のテーマになるんですけど「メディアの自立」ということに考えが至ったんです。 メディアは、いかにして霞が関など権力や政治から独立してモノを考えられるか、こうすべきじゃないかという議論ができるようになるか。でも、そういうふうに自分を位置付けて、政府や検察にモノを言ってくのは、大変なリスクがある。間違えるリスクがあるし、サラリーマンで論説委員やっていれば、給料もらえますし、周りからちやほやされます。でも、いずれ組織から離れたときに食っていけるか、という別の問題もある。たまたま私は、それなりにやってきましたが、私から見て、自分でモノを考えて、ポチにならずに議論している記者って何人いるか。ほとんど、見当たりませんね。◆対談は2020年6月24日に行われた
2020.07.28 07:00
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本と唐様で書く三代目」豊臣統一と安倍晋三が日本を滅ぼす
 俗に三代目は安定期と混乱期の端境期に君臨することが多いとされる。分断が懸念される社会、令和日本はどこへ向かおうとしているのか。覆面作家にして経済記者、『トヨトミの野望』『トヨトミの逆襲』の著者である梶山三郎氏がレポートする。 * * *◆株主総会で突然飛び出した「ロバと老夫婦」の話 新型コロナウイルスのパンデミック不況は、1930年代に世界を襲った大恐慌のように長期戦になると警鐘を鳴らす識者は多い。経済を復調させるためにロックダウンの封鎖を緩めれば、感染者数が増大し、封鎖すれば経済が落ち込む、その繰り返し……。 この先いったいどうなるのか、どの企業も今年の業績見通しを示せない中、時価総額22兆円で日本一の巨大企業トヨタが業績予想(2021年3月期決算)を公表したのは5月12日だった。メディアは、これを「営業利益は8割減、5000億円に急減する」と一斉に報じた。 そして6月11日。トヨタ自動車の株主総会で、最初に質問に立った株主が「(2021年3月期決算での営業利益の見通し)5000億円は当てになるのか。なぜ予想の数字を出したのか」と問いただした。(Amazonで無料ダウンロード) 豊田章男社長は「自動車産業はすそ野が広い。“当てになる数字”ということではなく部品メーカーなど取り引き先に対してトヨタが目指す“一つの基準”を示した」と答え、すぐにこう切り返した。「ところで、ロバと老夫婦の話をご存知ですか。ロバを連れながら夫婦が歩いている。すると、なぜロバに乗らないんだと言われ、お爺さんがロバに乗り、お婆さんが歩いていると、ずいぶん威張った旦那だと言う人がいる。逆にお婆さんが乗っていると、あの旦那は奥さんに頭が上がらない、と言う。二人が乗ると今度はロバがかわいそう、と言い出す。最近のメディアを見ていると“何がニュースかは、自分で決める”という傲慢さがある」 なにをやっても新聞は悪いことしか書かない、ということを言いたかったのだろう。このやり取りを聞いていたトヨタ関係者が、豊田社長がいら立っている事情を説明してくれた。「日頃から豊田社長は担当記者に対して、危機感がなくなるのでトヨタをほめ過ぎないでほしいと言っているため、多くの担当記者はそれを真に受けて『急落8割減』と書いた。しかし、今回はそれが気に入らなかった。競合他社が揃いもそろって業績見通しを出せない中、トヨタだけはあえていま予想できる範囲で数値を出したことや、何とか黒字を維持しようとする姿勢を評価してもらいたかったからでしょう。要はメディアに褒めてもらいたかったわけです」 株主総会後の記事は、一転、「トヨタは大丈夫」といったような論調が大勢を占めた。さらには、名優の香川照之を使い、「リーマン・ショックの時は、過去最悪の4600億円の赤字決算に陥ったのに、それを上回るコロナ・ショックで5000億円の黒字を出す決意表明だ」と解説する自社のオウンドメディアやテレビコマーシャルを展開している。 自分の価値観と合わない記事やメディアを徹底的に批判、排除する姿勢といえば、安倍晋三首相の右に出る人はいないだろう。コロナ危機対応をめぐる最近の首相会見でも、辛口の記事を書くフリーの記者を指名しなかったことが問題になったことは記憶に新しい。 しかしそんなメディアコントロールの努力も甲斐なく、なかなか届かない「アベノマスク」、国会でも紛糾した中小事業者への持続化給付金業務の丸投げ発注をめぐる「前田ハウス」問題と、新型コロナウイルス対策に関して安倍政権の打つ手がことごとく失敗したあげく、通常の10倍とも言われる破格の1億5000万円を選挙資金として注ぎ込んだ河井克行・案里夫妻が東京地検特捜部に買収容疑で逮捕され、内閣の支持率は急落した。◆安倍一族と自動車産業の裏面史 昨年11月、安倍晋三首相の在任期間が憲政史上過去最長となった。歴史を遡ると、2位が桂太郎、3位が佐藤栄作、4位が伊藤博文。安倍晋三を含めてみな長州(山口)出身だ。3位の佐藤栄作は、安倍の大叔父でもある。 大腸の病で失意の下、在任わずか1年で第一次政権を放棄した安倍晋三は2012年に奇跡的に復活、第二次政権をスタートさせて以来、8年近い長期政権を維持している。その理由は大きく4つある。 野党に全く力がないこと(敵がいない)、メディア対策がしたたかなこと(情報統制)、官邸を裏切らない仲間内で固めてきたこと(側近の重用)、自民党内に自分にとって代わる、あるいは代ろうとする人材がいないこと(人材の枯渇)、だ。 野党に力がないことは誰の目にも明らかだろうが、情報統制や側近の重用の実態は、官邸担当の新聞記者など以外には、じつはあまり知られていない。 情報統制とは、自分に苦言を呈する人間を排除し、自分の意見をそのまま垂れ流してくれる「御用メディア」と積極的に付き合い、ご褒美のネタ(情報)を与える、ということだ。 そして一次政権崩壊後も裏切らずに付き従った官僚や政治家、たとえば一緒に山登りをしたような人物が側近として重用される。そうした人物は、永田町や霞が関では「官邸側用人」と揶揄されようが、彼らの関心は、国民というよりも、いかに総理の寵愛を受けるかに注がれている。いや、最近の官邸周辺から漏れ聞こえるところによると、むしろ、東大出のエリート側用人が、お坊ちゃん育ちでお追従に弱い安倍首相を神輿に乗せて、やりたい放題しているとみたほうがいいのかもしれない。 安倍政治のファンは増えた。「美しい日本」といった独特の「愛国思想」に分厚い支持層がいることは事実だ。とくに世界で中国が存在感を増すと、地政学的に中国と近い日本では「中国脅威論」が根付き始めたことなどにより、社会全体が右傾化してきた。そこに安倍首相の掲げる保守概念がうまくハマった構図と言えよう。 安倍の身体に流れる「血筋」の良さが、「美しい日本」「強い日本」を求める保守層にはたまらない存在に映るのだろう。長期政権をささえる5つ目の理由として「血筋」が入るのかもしれない。 祖父は「昭和の妖怪」こと岸信介。その長女、洋子が安倍晋太郎(元外相)に嫁ぎ、3人の男子を産んだ。次男が晋三である。安倍首相は祖父の岸を尊敬していると言われる。 岸は戦前の商工省(現・経済産業省)で「革新官僚」として台頭した。1935年、同省工務局長として、軍事物資として重要な自動車の製造から外資を締め出す「自動車製造事業法」を制定。その翌年には、満州に移り、同国総務庁次長に就いた。 関東軍は、満鉄(南満州鉄道)線路を爆破する謀略工作で戦端を開き(満州事変)、1932年に清朝の皇帝・溥儀を迎え入れて満州国を建国していた。その満州を支配したのは、岸信介に加え、満鉄総裁の松岡洋右、関東軍参謀長の東條英機、同国総務長官の星野直樹、日産自動車の創業者で持ち株会社を満州に移転させた鮎川義介の5人だと言われる。 彼らは、その名前をとって満州の「2キ3スケ」と呼ばれた。敗戦により、この5人は全員戦犯として逮捕されるものの、岸は復活して首相の座を射止め、強固な日米安全保障体制を築いた。岸の盟友だった鮎川義介は復活して岸内閣では経済最高顧問に就いた。鮎川も長州出身で、大叔父は明治新政府で大蔵卿を務めた井上馨。長州つながりが岸と鮎川を結び付けた。 岸は自動車産業、とくに日産との関係が深かったわけだが、それが孫の安倍晋三の代に因縁のごとく巡り巡ってくる。2018年11月19日に逮捕された日産会長(当時)のカルロス・ゴーン事件の構造は、日産とルノーとの経営統合を目論む外国人経営者を排除した国家と日産が結託した一種の「クーデター」のようにも見えた。歴史は繰り返すのかもしれない。◆安倍晋三とそっくり 満州に拠点を築いた長州人、鮎川義介の妻の美代と、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎の妻、二十子はいとこ同士だったことは、世間ではほとんど知られていない。二十子の父は百貨店、高島屋の社長、飯田新七。美代の父は、新七の弟で高島屋専務の藤二郎だった。喜一郎の直系三代目に当たるのが、現社長の豊田章男である。 このトヨタ自動車の、これまで表沙汰になったことがない内幕を小説に仮託して描いたのではないかと世間を騒がせているのが拙著『トヨトミの野望』とその続編の『トヨトミの逆襲』である。トヨタはもちろん、これまで取材してきたいくつかの日本企業をモデルにして小説で描こうとしたテーマは、超グローバル企業における「サラリーマンと創業家のありかた」であった。小説の主人公は、トヨトミ自動車創業家の三代目で、同社社長の豊臣統一という人物である。 この豊臣統一の人柄、組織の動かし方、マスコミ対策が安倍晋三とそっくりなのだ。執筆した本人がこう言うのもおかしな話だが、コロナ政策、検事総長人事をめぐる不祥事や河井夫妻逮捕など一連のごたごたを見ていたらハタと気がつき思わず笑ってしまった。 そもそも経歴が似ている。安倍晋三の祖父、岸信介が偉大な政治家であり、安倍は三代目の政治家である。統一も祖父が自動車事業を起こした初代社長で、創業家の三代目だ。 統一も、安倍晋三と同じように、情報統制と側近の重用で社内外を固め、自分に反論する者は、役員だろうが課長だろうが徹底して排除してきた。この結果、社内はイエスマンだらけとなった。えてしてこういう組織は、危機の際には、ぽきっと折れやすくなるものだが、トヨトミを取り巻く競合企業がそれ以上にひどい状況にあるため、危機が顕在化しない。野党の力が弱い安倍政権と同じ状況にあるのだ。 トヨトミ自動車は、創業以来、苦難の連続だった。初代の豊臣勝一郎は戦後の混乱期に倒産の危機に追い込まれるが、会社を守り抜き、先代の苦労を知る息子の新太郎は、手堅く経営を盤石にする。 しかし、やがて大企業病に陥り創業以来の危機を迎える。会長に退いた新太郎が、起死回生のため起用したのが、剛腕のサラリーマン社長・武田剛平。武田がグローバル化を進めて、会社を立て直し、トヨトミ自動車は「世界のトヨトミ」と言われるようになった。(Rakutenブックスで無料ダウンロード) その武田が、次に着手しようとしたのが、創業家が暗黙のうちに経営トップを世襲するという前近代性の改革だった。持ち株会社方式を導入し、創業家を持ち株会社の経営に専念させ、トヨトミ自動車本体には実力主義で経営者を起用する新たな組織づくりを模索した。言ってしまえば創業家が「君臨すれども統治せず」の経営体制を構築しようとしたわけだが、このクーデターは事前に発覚、豊臣家の逆鱗に触れ、武田は社長の座を追われる。 その後リーマン・ショックで大幅赤字に転落したのを契機に、いよいよ新太郎の長男、統一が「大政奉還」により社長に就任。統一は、武田一派を容赦なく社内から一掃し始める。豊臣本家をないがしろにした武田派へのリベンジは凄まじい。 統一は、持ち株会社構想のキーマンを真っ先に血祭りにあげる。経営企画担当の常務取締役だった武田の腹心を、大阪の系列運送会社の監査役へ飛ばしたのだ。また、豊臣の分家一族にも冷徹さを貫く。かつて、父・新太郎を見下した“トヨトミ中興の祖”の分家筋や、統一よりも人望も実力もあるいとこを子会社に放逐した。 こうした常軌を逸した復讐心で、いま政権を窮地に陥れてしまったのが安倍首相だろう。 先の参院選で、公職選挙法違反(買収)で逮捕・起訴された河井克行・案里夫妻に、1億5000万円ものカネを注ぎ込んで広島選挙区に案里氏を立候補させたのは、自民党の大物参議院議員の溝手顕正氏を落選に追い込みたかったからだったと言われている。溝手氏は第一次安倍政権のとき、2007年の参院選惨敗を「首相本人の責任」と厳しく糾弾。その後も陰で安倍の学歴や大腸の病気などあげつらうなど、言いたい放題。堪忍袋の緒が切れた安倍首相は、溝手氏を許せなかった。その私怨から地元・広島県連の猛反対も押し切って、河井案里議員を擁立したのだという。◆三代目が握る日本の命運 「売り家と唐様で書く三代目」という川柳がある。 祖父と父が苦労して商売を大きくしたものの、三代目の孫はぼんぼん育ちで苦労することもなく、ふだんから習い事ばかりをして商売のことを学ばないので、いざ事業を承継すると、とたんに経営を傾かせて、これまで築いてきた不動産を売却する羽目になるが、教養を身につけていたので、借金のかたとして家を売り渡すときには「売り家」と上手な字で(唐様で)書けるという皮肉がこもった意味を持つ。 たしかに、歴史上、三代目の頃が「鬼門」だ。鎌倉幕府では、二代将軍頼家の息子に三代将軍の実朝の殺害されたことにより源氏の血筋が途絶えた。室町幕府では三代将軍の義満以降は将軍家の権力が衰えた。 最近の自動車業界で言えば、エアバック生産で急成長した「タカタ」が三代目の代の2017年6月に1兆円を超える負債を抱え、製造業としては戦後最大の経営破綻にいたる。 三代目は安定期と混乱期の端境期に君臨することが多く、これまで成功してきた勝利の方程式が通用しない局面に差し掛かり、その力量が問われることになる。『トヨトミの逆襲』では、EVを中心とする電動化や、クルマとAIの融合など迫りくる技術革新の波に、三代目の豊臣統一が揺れ動く場面が数多く盛り込まれている。「ポストコロナ」という“新常態”の時代を、日本は三代目の安倍晋三氏を首相に据えて迎えることになった。「日本モデル」で新型コロナの封じ込めに成功したという“美しい妄想”にひたっている間に、日本経済の屋台骨・トヨタ自動車の時価総額が、イーロン・マスク率いるEVの「テスラ」に追い抜かれた。この国の政・官・業の劣化は日に日に加速している。「日本と唐様で書く三代目」などと、この国が破綻しないよう祈るばかりだ。(文中敬称略)
2020.07.11 07:00
NEWSポストセブン
オンライン会見で流された新型フェアレディZのシルエット(YouTubeより)
大規模リストラの日産が新フェアレディZの開発を続ける理由
 業績悪化に伴い、大規模なリストラ計画を打ち出している日産自動車。だが、これから発表する新モデルのクルマの中には、大衆車のようには利益が見込めないスポーツカー「フェアレディZ」の新型も含まれている。なぜ、日産はスポーツカー開発を続けるのか。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏がレポートする。 * * * ビジネスを立て直すための構造改革費用を上乗せしたことで、2019年度決算で6700億円という巨額の純損益を計上した日産自動車。オンライン決算会見に続いて行われた事業構造改革の説明会で、内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)は「日産のポテンシャルはこんなものではない」と語り、2021年までにグローバル市場に12車種の新モデルを投入することを表明した。 会見の最後に「NISSAN NEXT」と銘打ったショートムービーが流れた。そこに映し出されたのは新モデル12車種。低光量、逆光のため、ディテールまでは見えないが、シルエットは綺麗に浮かび上がっている。背景にはそれぞれの車名の頭文字が表示され、「アライヤ(EV)」「パトロール(ラージSUV)」「ノート(サブコンパクト)」「ローグ(コンパクトSUV)」等々であることがわかる。 12車種のラストの文字は「Z」。ルーフの低い2ドアクーペのシルエットはまぎれもなく日産伝統のスポーツカー「フェアレディZ」だ。そして、他の車種の投影時間が個別にそれぞれ1.5秒くらいであるのに対し、Zは12車種が勢揃いするまで約10秒、見る人の目を占有し続けた。 世界を震撼させている新型コロナの世界的流行による市場環境の激変で、自動車メーカー各社は戦略の大幅見直しを迫られている。その煽りを一番食っているのは、スポーツカーやスペシャリティカーなど“情感系”のモデル。作っても数も利益も出ないことから、延期であればまだマシなほう、多くはプロジェクトそのものが中止という憂き目に遭っている。 そのような状況の中、1990年代後半以来の経営危機に見舞われている日産がフェアレディZのフルモデルチェンジをやめないことを意外と捉えたライバルメーカー関係者は少なくない。「日産は前任の西川(廣人)社長時代『安物商売ではいずれ立ち行かなくなる』と、高付加価値分野にシフトする意向を明らかにしていましたが、それは良品廉価でやってきた日本のカーブランドにとっては茨の道で、よほどの意思がなければ必ず中途半端になる。実際には売り上げの立つモデルに集中せざるを得ないだろうと踏んでいました。 その日産がおよそ利益を見込めないフェアレディZをやめないというのは本当に意外。引っ込みがつかないだけなのか、本気でブランド再構築をやり通そうとしているのか、今の時点では判断できませんが……」(国内自動車メーカー関係者) コロナ禍やCASE(コネクティビティ、自動運転、シェアリングエコノミー、電動化)対応など多くの変化がいっぺんに押し寄せている自動車業界が今後、どう変化するかは未知数。内田社長は会見で、「どのような環境の中でも常に人を中心に見据え、楽しさを提供していく」と日産のイメージを語っていた。 すでに大規模なリストラが進行中の日産においてフェアレディZのようなモデルを残すという判断を下したのは、日産が個人の喜びにかかわるパーソナルモビリティの分野をこれからも大事にしていくのだと、世間だけでなく社内にも示そうとしてのことと考えられる。 日産の歴史の中で、フェアレディの名は元プリンス自動車(1966年に日産に吸収合併)の「スカイライン」と並び、最も長きにわたって使われてきた車名だ。小型オープンスポーツである「ダットサン・フェアレディ」が発売されたのは1960年で、今年はちょうど60周年にあたる。 フェアレディZの第1世代が登場したのは1969年。オープンからクローズドボディに変わり、より高性能を目指したモデルだったが、フェアレディの生みの親でアメリカの自動車殿堂入りを果たした“ミスターK”こと故・片山豊氏の精力的なセールスもあって、庶民向けスポーツカーとしてアメリカで大ヒットとなった。 その後、モデルチェンジのたびにTバールーフ(頭上のルーフパネルを取り外し式にしたもの)、ターボエンジンなどの新技術を積極投入し、主にアメリカで大いに存在感を上げていったが、そのアメリカでスポーツカーの自動車保険が大幅値上げされたことでスポーツカー市場が打撃を受け失速。2000年でいったんその歴史が途切れることになる。 そのフェアレディZを復活させることを決めたのは、ルノーからCEOとして送り込まれてきたカルロス・ゴーン元会長だった。スカイラインや高級セダン『フーガ』などと共通のプラットフォームを使い、少量生産モデルの宿命である高コストを最小限に抑えるという手法ではあったが、2002年に2年のブランクで再登場。2008年に現行モデルにフルモデルチェンジされ、現在に至る。 エコカーが自動車市場を席巻している現状では、一部のファンを除き、現行フェアレディZがどういうクルマか即座に思い浮かべるのも難しいというのが普通であろう。それだけイメージが希薄化してしまったのだが、途中2年のブランクを差し引いても58年もの長きにわたって名を継承してきたスポーツカーは日本ではフェアレディZだけだ。 そんなフェアレディZだが、いざ運転してみると、実は壮絶に楽しく、速く、バランスの良い、ミドルクラスとしては第一級のスポーツカーだ。筆者もステアリングを握る機会はまれにしかないが、乗るたびに新鮮な感動がある。 スポーツカーといえば昨年、トヨタが「スープラ」を復活させたことがクルマ好きの間で話題になったが、その新鋭のスープラに乗った時、その良さを体感するのと並行して、発売から10年以上が経ったZの良さが脳裏に浮かんだものだった。 エンジンのパワー感、いかにもフリクションの小さそうなメカニカルノイズとアドレナリンを分泌させる排気音、スロットルレスポンスの良さ。左右のサスペンションマウントを堅牢なタワーバーで締結したシャシーは剛性感抜群で、クルマの精密な動きがシートを介して体に伝わってくる。 そんなZをたまたま直近でドライブしたのは今年2月、北海道での雪上試乗だった。 スタッドレスタイヤを履き、車両安定装置も装備しているとはいえ、後輪駆動のハイパワースポーツを雪上でドライブするのにいかほどの緊張を強いられるかと思いきや、右曲がりと左曲がりでの挙動の違いのなさ、雪上の低ミュー路でも滑り出しが如実にわかるインフォメーションの豊かさ、そして実にバランスの良い前後サスペンションのロールセッティングの合わせ技で、ゲレンデでスキーを楽しむかのように走れたのだ。量産スポーツカーとして世界に誇れる性能だと確信をもって言える。 それだけの性能や楽しさを持ちながら、なぜフェアレディZはここまで印象希薄になってしまったのか。その一因はデザインにあるような気がする。全体のシルエットは実は結構マッシブなのだが、フロントフェイスとテールエンドの妙な造形がその良さを打ち消してしまっている。 スポーツカーにとってルックスの第一印象は命とも言えるもので、見ただけでそのクルマがどういう特質を持っているか、何を目指しているかが直感的に伝わってくるものでなくてはならない。現行フェアレディZは乗り込んで操縦してみるまで、その本性に気が付かない。デザインにそれを予感させる部分がないからだ。 来年までに発売されるという次のフェアレディZがどういうデザインなのか、細部はまだ不明だが、前述の予告映像で出てくるシルエットは美しく、かなりの期待感を抱かせるものがある。動的な部分がどうなるかについては、現行モデルの完成度から推測して悪いことにはなるまい。 もちろんフェアレディZひとつで日産のイメージが劇的に好転するということはないだろう。スポーツカーを1台、2台作っても、それ以外のモデルとの乖離が大きければ、たまたま遊びで作ったと思われるだけである。 では、日用品のモデルをスポーツカーに寄せて作ればいいのかといえば、それも全然違う。日産だけでなく、スープラや「86」を作っているトヨタ、「NSX」を作るホンダ、「ロードスター」を作るマツダも同じような悩みを抱えている。 スポーツカーを孤立させず、パーソナルモビリティが持つ移動の喜びを追求するブランドを象徴する存在に昇華させることができるか。その困難なチャレンジがこれから始まるわけだが、少なくとも日産が目先のことだけにとらわれず、長期的にモノを見ようという意思を捨て去っていないということが分かっただけでも、日産ファンにとっては朗報と言えるだろう。
2020.06.10 07:00
NEWSポストセブン
コロナ禍の株主総会 赤字深刻化の大塚家具、ゴーン後の日産の争点
コロナ禍の株主総会 赤字深刻化の大塚家具、ゴーン後の日産の争点
 株主総会が本番を迎える6月。今年はコロナ禍で開催延期を決める企業も現われたが、赤字が深刻化している企業の総会は注目されている。【写真】昨年の日産の株主総会の様子 かつては父と娘が壮絶なバトルを繰り広げた大塚家具。2015年に大塚久美子社長が父で創業者の勝久氏を会長退任に追い込むと、その後に勝久氏が匠大塚を創業した。 父と娘のつばぜり合いは、多額の赤字を抱えた大塚家具が昨年12月にヤマダ電機の子会社となることで終焉した。経済ジャーナリストの山口義正氏が語る。「久美子社長は窮余の一策でヤマダ電機の軍門に下ったが、目下の売上高を見る限り、子会社となった効果は出ていません。株主総会では久美子社長への追及の声が上がるでしょう」 2018年11月にカルロス・ゴーン前会長が金融商品取引法違反で逮捕されて以来、ゴーン・ショックに揺れる日産自動車は、新型コロナの影響もあいまって11年ぶりの当期赤字が見込まれる。「昨年はゴーン氏との決別がテーマだったが、今年は新型コロナの影響で落ち込む業績がテーマとなる。世界的な需要消失の前に打つ手は少なく、2008年のリーマンショック時に、経営破綻寸前に追い込まれた苦い記憶がよみがえる株主も多いはず」(同前) 日産の連結会社である三菱自動車も当期赤字260億円になる見通しで、株主総会での大きな争点となると見込まれる。 早稲田大学名誉教授の上村達男氏は、「今年の株主総会は企業のモラルが問われる」と指摘する。「新型コロナ対策を名目に質問時間を短くしたり、規模を縮小したりする会社が現われるかもしれない。しかし、それは企業倫理に反します。例年通り開催できないなら、延期も検討すべきです」 6月には、企業から株主に“緊急事態宣言”が出されるかもしれない。※週刊ポスト2020年5月22・29日号
2020.05.18 07:00
マネーポストWEB
それでも日本は気になる(AFP=時事)
逃亡のカルロス・ゴーン氏 レバノンから「リモート検察批判」
 会社法違反などで東京地検特捜部に逮捕されながら、保釈中の昨年末にレバノンへ逃亡した日産元会長、カルロス・ゴーン氏。その後の記者会見で「日本の司法制度の問題を訴えたい」と語っていたが、本来なら日本で裁判が開かれる予定だった4月以降、いよいよ動きはじめた。 4月15日、元東京地検特捜部・郷原信郎氏のインタビューに応え、自らの無罪を主張した『「深層」カルロス・ゴーンとの対話』(小学館刊)が緊急刊行されたのに続き、24日には日本の刑事司法を考えるイベント(YouTube配信)にレバノンから“リモート出演”した。イベントで公開討論した郷原氏が言う。「ゴーン氏は“日本の人質司法について訴える場ならぜひ協力したい”と参加してくれました。保釈中で日本にいた時より顔色もよく、ずいぶん若々しく見えました。『レバノンでもコロナ感染が大変な状況ですが、政府が厳しい対応を取っているので大丈夫だと思います。日本政府は対応が遅いと海外メディアからも批判されていますね』と心配していました」 なおゴーン氏は、苦労して日本から逃亡したにもかかわらず、レバノンでも外出自粛になっているという。せっかく自由になったはずが、これなら日本の保釈生活と変わらないのではないか……。※週刊ポスト2020年5月8・15日号
2020.04.28 16:00
週刊ポスト
週刊ポスト 2020年5月8・15日号目次
週刊ポスト 2020年5月8・15日号目次
週刊ポスト 2020年5月8・15日号目次あなたの家族の場合申請すれば「もらえるお金」・夫婦で得する制度 支援給付金で妻の年金が「月5000円アップ」!・老親と得する制度 介護用の自宅リフォームで200万円控除・我が子と得する制度・離れて住む親子で得する制度・祖父母と孫で得する制度・兄弟で得する制度・単身者が得する制度特集◆病院・薬局に払っている「無駄なお金」総覧リスト56◆伝説のクイズ番組 歴代優勝者たちが選んだ「超難問25」◆【合併号 特別付録】おとなの「GWテレビ番組表」名作映画&ドラマの再放送から懐かしのスポーツ名場面、訪れた気になれる旅番組まで◆幻のモスクワ五輪代表 40年目の追想東京五輪2020年代表へのメッセージ◆金正恩「重篤」で“米朝開戦”へ!◆3か月で取れる「定年後に稼げる資格」15◆体に良い“ゴロゴロ” 悪い“ダラダラ”◆どうしても「会いたい!」やっぱり「会えない…」コロナ不倫の愛憎劇◆令和1年間のお騒がせ人物&事件どうなった?カルロス・ゴーン、あおり運転男、京アニメ、韓国タマネギ男、首里城焼失、武蔵小杉タワマン、即位パレードオープンカー、東出昌大、沢尻&唐田◆亡国宰相に告ぐ「言わずに死ねるか」◆「安倍コロナ総辞職」そして「小池の乱」再び!ワイド◆安倍昭恵「夫の貴族動画」に「いいね!」◆追悼 岡江久美子さん◆「一律10万円給付、もらいますか?」ヤクザ幹部たち◆石田純一「ラウンド感染」◆皇室“テレワーク公務”グラビア◆傑作パズル12問に挑戦!◆フジテレビ 女子アナ帝国の謎◆染谷有香 Honey Trap◆岩本和子、独白!◆東京 美食名店のテイクアウト7◆47都道府県お取り寄せおつまみ◆ネット美術館に行こう!◆塩地美澄 あなただから、脱ぎます…◆福井セリナ 濡れたカラダを抱きしめて◆素足のアイドルたち THE NUDE◆美しい写真集で巣ごもりライフに潤いを!連載・コラム◆中川淳一郎「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆平岡陽明「道をたずねる」【コラム】◆二題噺リレーエッセイ 作家たちのAtoZ◆須藤靖貴「万事塞翁が競馬」 ◆広瀬和生「落語の目利き」◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆鎌田實「ジタバタしない」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」◆河崎秋子「羊飼い終了記念日」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方
 スペシャル大前流「テレワーク仕事術」◆ビートたけし「21世紀毒談」◆連載「二度と撮れないニッポンの絶景」
2020.04.27 07:00
週刊ポスト
橘玲氏 ゴーン氏は日仏「国家vs国家の謀略」に巻き込まれた
橘玲氏 ゴーン氏は日仏「国家vs国家の謀略」に巻き込まれた
 日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。橘玲氏(作家)は2人の対話をどう読み取ったか。 * * * 日産だけでなく日本の組織はすべてそうでしょうが、権限と責任を明確にしません。その結果「無限責任」になってしまい、いちど失敗したらどこまで責任を問われるかわからない。 これはものすごい恐怖なので、身を守るためには誰も責任を取らない「無責任社会」をつくるしかない。これは企業だけでなく、日本のすべての組織が持っている体質です。 日産がバブル崩壊後の1990年代に経営危機に陥ったとき、経営と労組は相手に責任を押しつけようと、えんえんと罵り合っていました。そんななかゴーン氏が現われ、「俺が全部決める」と宣言した。誰かが決めなければ組織は前に進めません。毀誉褒貶あるにせよ、あのときに彼がいなければ日産は潰れていたでしょう。 ゴーン氏が追放された経緯もきわめて日本的で、日産幹部が経産省と謀議し、検察に「国策捜査」をもちかけ、官邸にも話を通したと考えるのが自然です。そうして誰も責任を取らずに済む状態をつくった。 経産省はクーデターの謀議を認めないし、検察はたんなる金融商品取引法違反と特別背任だというでしょう。首相や官邸は、「そんな話はいっさい知らなかった」で済ませばいい。 とはいえ、政権幹部が「この捜査はおかしい」と言い出せばすべてひっくり返ってしまうのですから、ゴーン氏が出来レースを疑うのは当然です。もちろんフランスも、ルノーと日産の統合を国策で進めていたわけで、そういう意味では国家vs国家の謀略に巻き込まれたともいえます。 しかし、そうやって日本政府が必死に守ったところで、日本の自動車メーカーが10年後に残っている可能性がどれほどあるでしょうか。 日本が国の総力を挙げても小型ロケットをようやく打ち上げることしかできないのに、イーロン・マスク氏はスペースXで大型ロケットを次々と打ち上げながら、テスラで電気自動車をつくっている。その圧倒的な技術力を見せつけられると、日産どころかトヨタやホンダですら対抗できるかどうか疑問です。AIによる自動運転と電気自動車が実用化し、急速に普及すれば、日本やドイツの既存の自動車メーカーはすべて脱落していくのではないでしょうか。 そう考えれば、ゴーン氏追放の影響はじつはそれほど大きくないことがわかります。イノベーションなき製造業は、どちらにせよ生き残っていけないわけですから。●橘玲(たちばな・あきら)/1959年生まれ。小説『マネーロンダリング』(デビュー作)や『タッスクヘイブン』のほか、『言ってはいけない』『上級国民/下級国民』など著書多数。※週刊ポスト2020年5月1日号
2020.04.26 07:00
週刊ポスト
ゴーン告白本を読んだ江上剛氏「彼も社員もサル化していた」
ゴーン告白本を読んだ江上剛氏「彼も社員もサル化していた」
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。江上剛氏(作家)は2人の対話をどう読み取ったか。 * * * ゴーン氏には一度、テレビ番組でインタビューしたことがあります。ともかく頭の回転が速く、質問に対して機関銃のようにまくしたてる。通訳が間に合わないほどのスピードで、相当緊張した覚えがあります。 トヨタのハイブリッド車が普及し始めた当時、「これからの時代はハイブリッドではない。電気自動車の時代になる」と断言していたことが印象に残っています。 彼が日本に来たときは、日本人の中にある種の外国人信仰があり、マッカーサー的な存在として受け止められていたのではないでしょうか。日産も、ゴーン氏の指示に従うことを受け入れていた。 ゴーン氏は本書の中で、自らを追放した西川廣人・元日産社長をこう評しています。〈西川は非常に忠誠心が高く、自分を律する人だった。日産社内でのニックネームは「ミスターアグリー」。ゴーンさんにアグリーしている(“I agree.”)という意味だと最近知った〉 西川氏に限らず、日産全体が会社を立て直すためにゴーン氏にアグリーだったのです。ところが、徐々にみな自分のことしか頭になくなってしまう。ゴーン氏は「日産を立て直した私が多額の報酬を得て何が悪い」となり、他の経営幹部はそれに嫉妬し、自分ももっと欲しいとなる。その上で起きた追放劇だったということでしょう。 思想家の内田樹さんが『サル化する世界』という本を書きましたが、ゴーン事件というのは、“サル化”した経営者が、同じく“サル化”した社員に追い出されたということだったんじゃないか。今さえよければいい、自分さえよければいいというサル化が事件の本質だったと、本書を読んで思いました。●江上剛(えがみ・ごう)/1954年、兵庫県生まれ。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。 1997年「総会屋利益供与事件」で広報部次長として尽力。その後、作家に転身。※週刊ポスト2020年5月1日号
2020.04.25 07:00
週刊ポスト
東京新聞の望月衣塑子記者
望月衣塑子氏 ゴーン氏告白に「記者として反省させられた」
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。望月衣塑子氏(東京新聞社会部記者)は2人の対話をどう読み取ったか。 * * * 私はかつて司法記者クラブに3年ほど所属し、東京地検特捜部の手がける事件もいくつか取材しました。その経験からゴーン事件を見ると、ゴーン氏が将来受け取ることになっていた報酬を記載していなかったことについて、「有価証券報告書の虚偽記載容疑」で立件することは、そもそも難しかったのではないかと感じています。 また、容疑内容に比べて、勾留期間が長いと思います。裁判所が勾留を延長するか、釈放を認めるかどうかの判断をする際に「この後、別容疑が控えているだろう」と先入観を持ってはいけません。 結局、ゴーン氏は特別背任容疑でも起訴されました。特別背任は立証のハードルが高く、さらに今回は関係先が海外にまたがるため、公判維持は難しいのではないかと感じていました。無理を承知で踏み切ったのかなという疑問も頭をかすめましたが、報道ではそういうトーンは少なく、旧来型の「犯人視報道」も目立ったのは驚きました。 昼夜を問わず当局の動きを追いかけ、少しでも他社を出し抜こうと“特ダネ競争”ばかりに意識が向くと、事件全体を俯瞰したり、容疑者の人権に配慮したりすることができなくなることがあります。担当記者は特捜部の“従軍記者”にならざるを得ない側面があり、その中で“強欲ゴーン”という、検察側のストーリーに乗った記事を書いてしまいがちです。過去の自分も含めて反省しなければなりませんが、結果、記者が捜査当局に体よく使われてしまう。 改めて事件報道の在り方を考えさせられました。 話は変わりますが、ゴーン氏の逮捕当時の法務事務次官は、最近定年が延長された黒川弘務氏でした。黒川氏は菅官房長官と近いとされている人物。捜査の着手の時点で菅氏や官邸側に事前に報告があったと考えるのが自然です。ゴーン氏は事件について、官邸や政府高官の関与を口にしていますが、それが誰なのか。今後明らかになる可能性があり、注目しています。●望月衣塑子(もちづき・いそこ)/1975年、東京都生まれ。東京・中日新聞社会部記者。官房長官会見での厳しい質問で知られる。著書に『新聞記者』など。※週刊ポスト2020年5月1日号
2020.04.24 16:00
週刊ポスト
田原総一朗氏 ゴーン逮捕と日産幹部保身は「これが日本人」
田原総一朗氏 ゴーン逮捕と日産幹部保身は「これが日本人」
 日産自動車元会長、カルロス・ゴーン氏の肉声を10時間以上にわたって保釈中に聞き出していたのが元東京地検特捜部検事の郷原信郎氏である。その記録が『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話』(小学館刊)としてまとめられた。田原総一朗氏(ジャーナリスト)は2人の対話をどう読み取ったか。 * * * 僕はゴーン氏が逮捕された当初、これは“正義のクーデター”だと思いました。日産の大株主のルノーが、フランス政府の意向を受けて日産を統合したいと言ってきて、統合反対だったはずのゴーン氏はルノー会長の座を守るため統合賛成に転じてしまった。これを阻止するため日産は経産省と組んでゴーン氏の追い落としに動き、それに検察も乗った。それは、日本経済を守るための正義の行動であるという解釈でした。 しかし本書によれば、それは違うという。ゴーン氏はこう言っています。〈フランス政府は統合させたかったが、日産というか日本側は全く受け付けない。私の立場としては統合したくない。でも、物事を進めなければならないので、次のステップとして私が考えたアイデアが、持ち株会社(HD)の設立だった〉〈私はずっと統合には反対してきた。1999年以来ずっと統合はだめだと言ってきた。ところが、統合問題が私に対しての悪材料として用いられた〉 つまり、ゴーン氏は統合には反対だったのに、統合問題がクーデターに利用されたのだと。ゴーン氏はこのようにも言っています。〈経営上層部が、自分たちがクビになるおそれをかなり強く感じ始めた。(中略)業績が悪くなっていたし、HDだと全員が今の職を続けられない〉 ゴーン氏に引き上げられた日産の幹部たちが、実績を上げられずこのままではいつ解任されるか分からない……そうした不安に駆られて経産省や検察を巻き込んで事件が始まったのではないか。本書から浮かび上がって来るこの構図を、僕は説得力があると思いました。 森友問題で佐川宣寿・元財務省理財局長が文書の改竄を指示したのも、同じく自分の地位を失いたくなかったから。自分の地位を守るためには事実を歪め不正をすることも厭わない、これが日本人の性質なのだと、改めて思い知らされました。※週刊ポスト2020年5月1日号
2020.04.20 16:00
週刊ポスト
週刊ポスト 2020年5月1日号目次
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週刊ポスト 2020年5月1日号目次いまのうちに「お金の生涯計画」を練り直す・年金「増やすために稼ぐ」への大転換 ・相続「揉めない遺言書」の常識が変わった ・医療「充実の公的補助」をフル活用する ・介護「在宅で穏やかに老いる」ための備えを ・貯金 新制度活用で「元本保証で得する」へ ・投資 急落後の「お買い得株」の探し方 ・不動産「住まいのダウンサイジング」の注意点 ・葬儀「家族だけのお別れ」の準備を特集◆長生きしたければ肺を鍛える!自宅でできるかんたんトレーニング ◆男が罹ると死にやすい病気誤嚥性肺炎・狭心症・脳出血・胃がん・緑内障も◆プロの料理人がこれで一杯!「あの酒に合うコンビニ惣菜」12◆配信・再放送で楽しむ「時代劇再入門」時代劇研究家が厳選した“珠玉の10本”◆女優vs女子アナvs美女アスリート「STAY HOME動画」セクシー大賞◆どこが“緊急対策”なんだ! 新型コロナ救済が「不親切すぎる!」 ◆出社組も在宅組も不満が爆発!「働かされる人」vs「働かせてもらえない人」◆接触制限「8割」でなければいけない数理モデルが弾き出した根拠◆カルロス・ゴーンの告白を私はこう読んだ◆アサヒ飲料・米女太一社長 「ウィルキンソン」「三ツ矢サイダー」「カルピス」3つの“百年ブランド”で荒波を乗り切る◆「スポーツのないスポーツ紙」それぞれの悪戦苦闘◆安倍の“貴族動画”に愛想を尽かし菅が見限り「官邸内別居」ワイド◆濃厚接触者問題◆5月場所強行に白鵬待ったをかける!?◆大谷翔平◆JRA 新3人娘◆隅田川花火大会グラビア◆やらなきゃ損するフリマアプリ活用法◆「巣ごもりエロス」最新潮流◆後から前から、紳士的に脱がせるテクニック◆缶詰で作れる激旨パスタ◆貫地谷しほり撮り下ろしインタビュー 壁ドンされてキュンとする感情◆星名美津紀 みづみづしき女◆寝そべる女は美しい◆連載 二度と撮れないニッポンの絶景◆世界の賢人が予見する「わが国の終息」「人類復活の日」◆民放女子アナ11人 1年目の通信簿連載・コラム◆呉智英「ネットのバカ 現実のバカ」【小説】◆平岡陽明「道をたずねる」【コラム】◆二題噺リレーエッセイ 作家たちのAtoZ◆須藤靖貴「万事塞翁が競馬」 ◆広瀬和生「落語の目利き」◆堀井六郎「昭和歌謡といつまでも」◆秋本鉄次「パツキン命」◆戌井昭人「なにか落ちてる」◆春日太一「役者は言葉でできている」◆大竹聡「酒でも呑むか」◆綾小路きみまろ「夫婦のゲキジョー」◆大前研一「『ビジネス新大陸』の歩き方」◆高田文夫「笑刊ポスト」【ノンフィクション】◆井沢元彦「逆説の日本史」◆河崎秋子「羊飼い終了記念日」【コミック】◆やく・みつる「マナ板紳士録」◆とみさわ千夏「ラッキーな瞬間」【情報・娯楽】◆恋愛カウンセラー・マキの貞操ファイル◆ポスト・ブック・レビュー◆医心伝身◆ポストパズル◆プレゼント◆法律相談◆ビートたけし「21世紀毒談」
2020.04.20 07:00
週刊ポスト
また日本で話を聞ける日は来るのか…
ゴーン氏、インタビュー本刊行へ「出国成功率は75%だった」
 レバノンに不法出国した日産元会長のカルロス・ゴーン氏が、金融商品取引法違反などで逮捕・起訴された事件について語ったインタビュー本が刊行されることになった。 タイトルは『「深層」カルロス・ゴーン氏との対話 起訴されれば99%超が有罪になる国で』(小学館)で、4月15日刊行が予定されている。聞き手・著者は元特捜検事の郷原信郎氏。 郷原氏は昨年11月から12月にかけ10時間以上のインタビューを行ったが、ゴーン氏の出国により出版計画が白紙になっていた。その後、郷原氏はレバノンのゴーン氏とテレビ電話で連絡を取り、「それまでに行ったインタビューの内容は、すべて自由に使ってもらっていい。必要であれば追加のインタビューにも応じる」との了承を得た。その後、数度の追加取材を行い、刊行の運びとなった。 ゴーン氏は同書の中で、自身の出国についてこう語っているという。「成功の確率については、計画時にはもちろん100%成功させるという計画を立てたが、計画を立てた段階で予想できない事態が最後の最後に起きることもあることを考慮に入れると75%の成功率。しかし、裁判がいつ行われるかについて全く先行きが見えなかったこと、そして、公平な裁判が受けられる可能性が全く見えてこなかったことから、私はこのリスクをとった」 ゴーン氏は日産や検察の事件への関与について実名を挙げて証言しており、同書の刊行が、日本政府によるレバノン政府との引き渡し交渉、5月に予定されるグレッグ・ケリー前日産代表取締役の公判にも影響を与える可能性がある。
2020.03.10 07:00
NEWSポストセブン

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