アメリカと中国とロシアの各ブロックのこすれあう場所に日本があって、どのブロックも安全保障上、日本を取り込めればそれに越したことはない。アメリカも以前ほど仲良くしてくれないとはいえ、日本と手をきりたいわけではない。だったら米中露全部と安保条約を結んでしまえばよい。
無茶苦茶とも思われました。しかし3つの大国は乗ってきたのです。どの国も自らの生存圏を守りたいだけで、もはや世界制覇の野望を持っていません。3つのブロックの角突き合わすほとんど唯一の場所と言える日本で軍事的均衡を保つのが、3つのブロックの平和的共存の意思を世界に伝えるメッセージにもなる。
そこで日本は各国と安保条約を結び、ロシアには北海道での、アメリカには東北と中国地方を除く本州での、中国には九州と沖縄での軍隊駐留を認め、東北と中国地方と四国を緩衝地帯としました。3つのブロックは日本の国土では決して矛を交えないという文言も条約に明記されております。
かくして3つのブロックは、日本での均衡と平和を守れば各ブロックの安全性も高度に確認され続けるという、安保体制を構築するに至りました。
おかげで世界はずっと平和です。憲法第9条を理想的に実現しているというので、歴代の日本国総理はこのところみんなノーベル平和賞を貰っています。産業立国を諦めて観光と教育に徹した「新思考成長戦略」も成功しています。地域に分けてロシア語と英語と中国語を日本語と並ぶ公用語にし、語学教育も徹底しているので、多くの日本人が3つのブロックに出て行って仕事をし、そこからの送金もこの国を支えてくれています。
この不思議な安保体制が崩壊し、米中露が日本国内で限定戦争を始めて日本が2010年代のシリアのようになると心配する向きもありますが……。自衛隊もがんばっていますし、平和の続くことを祈るばかりです。未来の日本からお伝えしました。
(*以上はすべて筆者の空想に基づくもので、現実のいかなる物事とも関係のないことをお断りします)
※SAPIO2017年2月号