「最初の3か月ほどは、毎日、GT-Rのエンジンを組み立ててはバラす練習を繰り返しました。自分ではこれでいいと思っても、匠に問題を指摘され、違いを手先の感覚で覚えていきました」
現在は匠の指導の下でエンジンの組み立てに携わっている。候補生が組み上げたエンジンには、指導した匠のネームプレートが貼られ、品質を保証する形になる。
「組み立てで最も神経を使うのは、カムシャフトとバルブのクリアランス(隙間)。シックスネスゲージという工具を差し込んで、手に伝わる感触で調整します。この工程では頭を空っぽにして集中して臨みますね」
1基のエンジンを組み上げるのにおよそ9時間かかるとされるが、まだまだ匠の組み立てスピードに追いつけないという。上司にあたるエンジン課の宮崎裕司係長は、彼女をこう評する。
「やる気と根性があるんですよ。失敗してもくじけないし、それをバネに頑張ろうとする。彼女は高校時代、陸上のやり投げで神奈川県大会で優勝しているんですね。努力して高みを目指す姿勢がある」
匠へ昇格するための道のりはまだ長いが、大竹さんのネームプレートが貼られたGT-Rが疾走する日はそう遠くないかもしれない。
撮影■佐藤敏和
※週刊ポスト2017年1月27日号