今、注目の黒板アート。その人々を魅了する世界に潜入した。高校3年のときに母校の黒板に描いた『アナと雪の女王』の絵が編集者の目に留まり、宮部みゆきの小説のカバーイラストに大抜擢。以降、数々の黒板アートを世に送り出してきた画家のれなれなさん。
「芸大油絵科受験のため、木炭デッサンをしていたら、チョークと木炭は質感が似ているなと思ったんです。黒い地に白いチョーク、白黒反転の世界にのめり込みました」
チョークで描いた線を指先でこすってぼかし、グラデーションをつけていく。「化粧パフとか、色々試しましたが、指先が一番うまくいく。大きな作品のときは、指紋がすり減って指先が痛くなるんです」と、笑う。ゲームが大好きという二十才。今後に期待だ。
さらに、奈良の県立高校で美術教師をしている濵崎祐貴さんも黒板アートの魅力を語る一人。昨年、文化祭のために描いた『君の名は。』の黒板アートを、新海誠監督本人がリツイート。作品PRスタッフの公式アカウントでも「凄い…!」と大絶賛された。
肌の色、鮮やかな空、木々は、カラーのチョークを塗り重ね、リアルに表現されている。元々は、魅力ある授業づくりの一環として、生徒たちに美術に興味を持ってもらうために始めた。画家の狙いや苦労を考えるきっかけになればいいと、濵崎さんは語る。
黒板に描いた作品は、“どこかあたたかくて懐かしい感じ”がするという。
「いずれ消えてしまうはかなさも惹きつけられる理由かもしれません」
そして、濱崎さんは「一緒に甲子園を目指そう!」と美術部員たちと共に一念発起。昨年春、黒板などの製品を扱う企業が主催する“日学・黒板アート甲子園”の第1回目(第2回目は今春開催予定)に出品した。
「最初は3人ぐらいで始めたのに、最終的には部員全員の17人で朝から日が暮れるまで3日半描いていました」(濱崎さん)。黒板に向かう姿を部員どうしで確認しあいながら何度も書き直したそう。黒板アートを描く自分たちを描くという、難しいテーマにチャレンジし、見事優秀賞を受賞した。
※女性セブン2017年2月9日号