年齢を重ねれば、必ず表われるのが「目のトラブル」である。かすみ目や老眼にはじまり、白内障や緑内障など失明と隣り合わせの深刻な症状に発展するケースも少なくない。特に白内障では手術は避けられない。どのように眼科医を選ぶべきか。
設備もないため手術を避けたがり、大学病院への紹介状を書いてやりすごし「診療情報提供料」で稼ぐ町の開業医ではなく、はじめから設備の整う大学病院へ行くのが正解なのか。15万件超という世界トップクラスの眼科手術実績を誇り、欧米の医師から“世界一の眼科医”と呼ばれる深作秀春・医師はその選択には患者にリスクがあると語る。
「眼科の手術は臓器や他の診療科の手術と比較しても細かな手技が必要で、経験がモノをいう。そのため大学病院では、患者が経験の少ない医師の“練習台”となってしまうケースが少なくない。あくまでも担当医の手術実績を聞くことが基本となりますが、日本には信頼できる“眼科外科医”が非常に少ないのが現状なのです」
日本における眼科医のステータスの低さも、この現状を招いているという。
「日本の医学界には『目医者歯医者も医者ならば、蝶々トンボも鳥のうち』という戯れ言がある。それほど眼科医は低く見られており、優秀な医師は外科や内科に流れてしまう。結果、海外の最新研究を理解して実践できる人材はなかなか育ちません。
一方、米国の眼科医は医師の中でも競争が激しいスーパーエリートで、尊敬される地位を確立しています。だから世界から“日本の眼科治療は20年遅れている”といわれてしまうのです」(同前)
米国では「眼科医」は大きく2つに区分される。医学部出身で手術を行なう「オフサルモロジスト」と、専門学校出身で、診察とメガネやコンタクトの処方が中心の「オプトメトリスト」だ。
臨床現場で手術を行なう「オフサルモロジスト」には特に高い報酬が約束されている。
「欧米では繊細な技術のイメージから眼科医は『外科のクイーン』と呼ばれている。一方で、日本の眼科医はステータスも治療レベルも低く、こなす仕事は米国の『オプトメトリスト』に近い。これは本来の眼科医のあるべき姿ではないのです」(同前)
【プロフィール】ふかさく・ひではる:1953年、神奈川県生まれ。滋賀医科大学卒業。1988年、深作眼科を開院。現在も横浜本院、六本木院にて診療・執刀を行なう。著書に『やってはいけない目の治療』(角川書店)、『視力を失わない生き方』(光文社新書)などがある。
※週刊ポスト2017年3月3日号