映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、時代劇だけでなく『北京原人』のようなユニークな作品に出演するなどした1990年代、素晴らしい演出家に巡り合えてきたことについて本田博太郎が語った言葉をお届けする。
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本田博太郎は1995年、工藤栄一がメイン監督を務めたテレビシリーズ『雲霧仁左衛門』にレギュラー出演し、盗賊団の一味「州走りの熊五郎」を演じた。山崎努が扮する頭目の指示に対して「へい」と返事をするのだが、その口調が独特だった。
「工藤さんが熊五郎だったら、ということを考えていました。工藤さんだったら、命令されてもパッとは動かないだろう、と。ましてや山崎さんが頭にいて、小頭に石橋蓮司さんですから。あの二人の下では『はいっ!』って素直に従うような人間は通用しないと思いました。『お前、もういらん、おもろないって言われたくない!』と、もっと深いところで感じ、思考する、手に負えないような奴が集まってるはずです。
ですから、このような感じで『へ~い』となりました(笑)」
1997年の映画『北京原人 Who are you?』では原人役を演じて話題になった。
「俺の代名詞みたいになっちゃったけど、嫌なんです。あれは完璧な手作りで、CGなんか使わないでアメリカに持っていくべきだったんですよ。『猿の惑星』だけじゃない。日本にもこんなのを作る奴らがいるんだ──そう思えるくらいのができるはずだったと思います。
そこからきっと何かが生まれたと思うんです。たとえ日本で評価されなくとも、海外で分かってくれる人たちが必ずいるんだと。CGを使わなくとも、これだけ説得力あるものが日本でもできたって。もしそういうものができていたら、『俺たちはCGに頼り過ぎてきた。原点に戻ろうよ』と思う作品になっていたんじゃないでしょうか」