◆日本の強みはさらにある
意外に感じるかもしれないが、日本の強みの源泉は西洋的な民主主義が徹底されていないことにもある。
硬直した民主主義が徹底されると国民の権利意識が肥大し、労使の対立も熾烈になる。ドイツでも、その結果、交通機関のストが起こり、飛行機や鉄道がしばしば動かなくなる。
【日本人なら一握りの人の利益のため何十万人を困らせるのは間違いだと考える】が、ドイツ人にとっては、ストは「労働者の権利」だ。つまり戦うことは善。「利用者に迷惑をかけて申し訳ない」とは思わない。多大な迷惑を被る利用者は、労使双方の言い分を聞かされるばかりだが、基本的には「労働者の権利」を容認する。日本人は真似ができない。
日本では企業が不祥事を起こしたら役員報酬の減額は当たり前だが、ドイツでフォルクスワーゲンの排ガスの不正操作が露呈した際、一時的に役員報酬の減額案が浮上したものの、結局雲散霧消した。
ドイツでは、たとえ不祥事でポストを退く場合でも、契約分の報酬は臆面なく請求するのが普通だ。日本のように「会社のため潔く身を引こう」とは考えない。権利は法の徹底によって支えられる。必然的に、常に闘争する社会となる。謝罪は、法に触れたことが証明されて、初めて行われる。謝罪はすなわち賠償でもある。
ヨーロッパ人は生まれた時からこういう戦いに慣れているが、日本人は争いを好まず、「我慢して済むなら我慢する」タイプが多い。