日本は世界でも稀に見る格差の少ない国(写真:アフロ)
世界第3位の経済大国でありながら、日本国民は幸せを実感していないと言われる。しかし、海外から見れば、「幸福度1位」のスイスなどヨーロッパ諸国と比べても日本は負けていない。ドイツ在住の作家・川口マーン惠美氏が分析する。
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国連のレポートによると、平均寿命や社会福祉の充実、人生の選択肢の広さなどで測定した「国民の幸せ度」が一番高いのはスイスで、日本は46位だった(*)。だがドイツに30年以上住む私は、日本はスイスに劣らない「世界一の楽園」だと感じている。
【*「世界幸福度報告書」2015年度版より。最新の2016年度版ではスイスが僅差で2位(1位はデンマーク)、日本は53位に後退した】
実際、日本とスイスは清潔さや物作りが得意なこと、勤勉な国民性など共通点が多い。だが、スイスの産業は内需が足りなくて輸出依存度が高く、他国の需要に頼らざるを得ない。一方で【日本は内需が大きく、自国民を相手に安定した商売ができる】優位性がある。
ヨーロッパ諸国と比べると、【日本の最大の強みは基礎教育】だ。高等教育のレベルではドイツが上回るかもしれないが、字が読めず、簡単な暗算ができない人がほとんどいない日本は、基礎学力では世界を圧倒的に凌駕する。日本人の学力の最低ラインは非常に高い。
【電車が時刻表通りに走り、全国津々浦々まで行き届く宅配便サービス】など、日本の社会システムが円滑に回るのは国民の基礎学力の高さゆえである。2時間ごとのきめ細かな時間指定配達など、ヨーロッパ人は逆立ちしてもできない。学歴を問わず、あらゆるコンビニ店員がレジ作業に加え、銀行振込みや宅配の荷物の受け渡しまで幅広いサービスを難なく行うなんて、奇跡のようである。