「肉の隣にしらたきを並べると硬くなる」──すき焼きを囲む時、必ず誰かが言い出すこの豆知識に「待った」がかかった。2月23日、「一般財団法人日本こんにゃく協会」が、〈「しらたき(糸こんにゃく)がすき焼きの肉を硬くする」は誤解だった〉とする試験結果を発表したのだ。
料理番組などでも紹介され、“定説”とされてきた「肉を硬くする」説は、しらたきが水酸化カルシウム(石灰水)等の凝固剤で固められたこんにゃく製品のため、それに含まれるアルカリ性が肉を硬くするというものだった。
「しらたきが“悪者”になっているのが耐えられなかったのです」
本誌の問い合わせにそう語ったのは、こんにゃく協会の担当者だ。
「有名料理店やNHKの『きょうの料理』などでも、『肉の横にしらたきを置くと肉が硬くなるので避けること』をポイントとして紹介されていたので、なんとか誤解を解く方法を模索していたんです」
そこでこんにゃく協会は、一般財団法人食品環境検査協会に委託して、「しらたき」の有無による肉の硬さの比較試験を行なったという。「霜降りの多い国産和牛の肩ロース」と「霜降りの少ないアメリカ産肩ロース」を使用し、「しらたき無し」「水洗いのみのしらたき」「下茹で後に水洗いしたしらたき」の3条件ですき焼きを作り、5人のモニターが噛んで硬さを比較。
結果、「『しらたき』の有無による肉の硬さへの影響はみられない」「肉の硬さへの影響要因は加熱時間と肉の霜降り度合いが大きい」「『しらたき』」の有無や下処理の違いによるすき焼きの鍋(割り下)のpH(酸性・アルカリ性の程度)の変化はほとんどない」という結果を公表したのだ。
「最近のレシピサイトでは、すき焼きにしらたきではなく『くずきり』や『春雨』で代用する人が増えていて、このままではいけないと思っていたところに、費用の高くない今回の試験方法を見つけたのです。試験には高い肉を使いましたが(笑い)。反響も大きく、これでようやくしらたきの名誉挽回ができそうです」(同前)
新たな説は、こんにゃく問答にはならないようで。
※週刊ポスト2017年3月17日号