京都・四条烏丸。佛教大学の大教室に次々と人が集まって来る。3人掛けの机がずらりと並ぶ教室は、授業開始の頃には3分の2以上が埋まっていた。この日、その教室では、浄土宗の開祖・法然上人の著書『選択本願念仏集』を読み進め、理解を深めてゆく、『法然上人講座』が開かれていた。
「阿弥陀如来、何れの時、何れの仏の所において、この願ねがいを発したまえるや」から始まるテキストは、仏教に明るくない記者にはチンプンカンプンだが、生徒たちは時にうなずきながら講師の話に耳を傾け、ノートを熱心に取り続ける。私語はまったく聞こえない。机に向かうその姿は、白髪交じりだったり、老眼鏡をかけていたり、その表情に深いシワが刻まれている人も…。
ここ、佛教大学の『四条センター』では、生涯学習を目的とした公開講座がほぼ毎日開かれていて、当日受付をすれば誰でも受講できるシステムになっている。今回の『法然上人講座』の受講料は1回1000円だが、なかには京都にある美術館を専門家が解説する『もっと知りたい! 京都のミュージアム』など無料の講座もある。大阪から来た60代の女性は、2年前から時々受講しているそう。
「ここで行われるさまざまな講座を、8回くらい受講してます。もう子供も巣立って夫とふたりの生活だから時間をもてあまし気味なんです。だから美術とか音楽とか、興味の赴おもむくままにいろいろな講座に顔を出してます。今日は、うちも浄土真宗だから法然さんってどんな人かちょっとのぞきにきたんです。難しかったけど、うちのルーツが少しわかったような気がします」
勉強から遠く離れていたが、再び学ぼうと、大学の門を叩く人が増えている。
「大学で勉強」といっても、過酷な受験勉強や多額の受験料、入学金が必要なわけではない。もっと気軽に、たくさんある講座の中から好きなものや興味のあるものを選び、受講することができる「公開講座」や「科目聴講生」などの制度があるのだ。例えば、全国で最大といわれる早稲田大学エクステンションセンターでは約1800もの講座の中から選んで受講することができる。入学試験はない。