政府は政府でやるべきことがある。福島第一原発の廃炉作業には東芝の技術が不可欠だ。しかし、このまま東芝の混迷が続けば、原子力部門からの人材流出が懸念される。福島第一原発の事故処理は、一義的には東京電力に処理責任があるとはいえ、国が責任をもって対応に当たるしかない。
そのために、東芝のほか日立製作所や三菱重工業などの原子力技術を持つ日本の会社から、人材と技術を集約する企業体を国が新たにつくるべきだ。企業としての東芝が無くなっても、その人材や技術が守られることになる。間違っても、東芝の「負債」を引き継ぐ会社にしてはならない。
経営力なき“日本的経営“と決別し、世界のスタンダードに脱皮するきっかけになるなら、東芝を倒産させる意義はじゅうぶんある。
■取材・文/磯山友幸(経済ジャーナリスト)
【PROFILE】1962年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で記者などを務め、2011年3月末に独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、執筆活動を行っている。著書に『国際会計基準戦争完結編』『ブランド王国スイスの秘密』(いずれも日経BP社)などがある。
※SAPIO2017年5月号