現代は「社宅復活期」といわれ、各企業が優秀な若手社員獲得のために設備の充実を図っている。そうした中で想起されるのが、バブル経済真っ盛りの1988年から1991年にかけて、『ビッグコミックスピリッツ』に連載された大ヒット漫画『ツルモク独身寮』だ。
高知の工業高校を卒業後、東京の郊外にある木工家具製作会社に就職した主人公が、会社の独身寮の住人たちと繰り広げる人間模様を描いたコメディだ。自身も寮生活の経験があるという著者・窪之内英策氏が、社員寮復権になりつつある今、当時の生活を振り返る。
* * *
1984年に高知県の工業高校を卒業した後、愛知県の大手家具メーカー・カリモク家具に就職。1年ちょっとの短い時間でしたが、独身寮で生活しました。『ツルモク独身寮』はその体験をもとに描いたんです。
バブル期で、寮には50人ぐらいの若手社員が暮らしていました。『ツルモク』と同じで4人1部屋の相部屋でした。部屋の真ん中にコタツがボンと置かれていて、1台だけテレビがある。みんなコタツを囲んでワイワイやって、寝る時は布団を四隅に敷いて寝る。間仕切りは一切ナシ。
女子寮もありましたが、男子寮からは少し離れていました。『ツルモク』では「男子寮の屋上から女子寮を覗く」というシーンがありますが、あれは完全に僕の願望というか、ファンタジー(笑い)。主人公と2歳年上の女子寮の先輩との恋愛模様も妄想。実際には、僕は女子寮の人たちとは接点がなくて、たまに近くで見て、ドキドキする程度でした。