小川のせせらぎや波の音など、自然界には心地よさを感じるさまざまな音が存在している。これらに共通しているのが、“f分の1のゆらぎ”といわれる、独特の音色だ。
明治40年の創業以来、仏具に携わってきた『山口久乗』(富山県高岡市)の広報担当・山口直子さんは、同社の「久乗おりん」も、その独特の音色を奏でるものだと話す。
「古来より使用されてきたおりんは、天上にいらっしゃる仏様やご先祖様に供養が届くように、お知らせする役割のある祈りの音。また、邪気を払い、場を清めるともいわれ、人の心を整えてくれる、不思議な音でもあります。そもそもこの音色に、いったいどんな効果があるのか、日本音響研究所で分析してもらったところ、『f分の1のゆらぎ』の音という結果だったのです」(山口さん)
f分の1のゆらぎとは、音の高低が揺らぐ“周波数のゆらぎ”と、音の強弱が揺らぐ“振幅のゆらぎ”が生み出す、特別な音。これらの音を聴くと脳波にα波が増加し、リラックス効果があると実証されている。
そんな癒し効果があるおりんの音に、日常生活の中で親しんでほしいとの思いで作り出したのが、「山口久乗 どありん」(幅5×奥行5×高さ9cm マグネット付 6480~7560円)。
最小サイズでおりんらしい“うねりの音”を出すため研究し、直径を3cmに設定。さまざまなインテリアによくなじむデザインに仕上げている。
従来のドアベルは扉の開閉や人を呼ぶため、やや大きな音が出るように作られている。対して、「どありん」の音は、生活の中に溶け込んでしまうほどか細いが、耳障りにならず、環境によっては十数m先まで音が届くという。
自然の中に身を置かなくても、家の中で心地よさが感じられる、新しい音のインテリア。玄関ドアだけでなく冷蔵庫や戸棚などに設置して、心地よい音色に癒されてみては?
おりん部分は、鋳型を使った真鍮製。これを削って磨き、美しい音色になるように仕上げる。「伝統工芸の職人の手仕事の部分が多く、気温や湿度などにも左右されるため、月に200~300個しか作れないので、お待ちいただくこともあります」と、山口さん。引っ越しや新築祝いに注文する人も増えている。
※女性セブン2017年5月25日号