汗やニオイに対する意識は、最近10年で大きく変化した。子ども向けのスポーツ体験教室の講師をつとめるインストラクターによると、2000年代以降、汗をかくことや触れることを嫌がる子どもが現れたという。中高生を対象にした昨年の調査では、自分の汗臭さや体臭が気になった経験のある人が74%、友人のニオイが気になったこともある人も71%にのぼっている。また、高校生では48.7%が「市販の汗ふき取りシートを使用」し、40.0%が「制汗剤を使用」して学校生活におけるニオイ対策をとっている(マクロミル調べ)。
株式会社マンダムでは、昨年から高校生向けにニオイケアセミナーを実施しているが、広報部の萩原奈津子さんは、その現場でも汗とニオイ対策を高校生から求められていることがわかりましたと話す。
「学校でのエチケットについて聞いたところ、ニオイの問題は生徒への個別指導がしづらいこともあり、学習するという形で意識を高めたいという学校側からの声で始まりました。昨年、ニオイケア冊子を使って生活指導や養護教諭、部活顧問の先生が指導する形で51校・計20066名、弊社社員が出向いての出前授業を6校・計490名の生徒さんに受けていただきました。汗を拭くボディペーパーを使うのは運動部の学生さんにとっては当たり前のようです。
今年初めて、高校生のお子さんをもつ保護者向けのセミナーも実施しましたが、スニーカーのニオイをとりたいなど、以前ならあきらめていたことに取り組む意欲を見せる方が少なくありません。最近は、少年向けスポーツマンガでも汗の描写は控えめなものが多いそうですし、汗をかくことに対する意識も変わってきているようです」
汗やニオイを避ける人々の気持ちと、消臭や除菌、洗う技術の発達が、長年、難攻不落と思われてきた剣道にまつわる汗とニオイにも対抗できるようになった。「あのニオイがしてこそ剣道」という気持ちを密かに抱いている関係者にとっては、ちょっと寂しい時代になってしまったのかもしれない。